②キルシュブリューテ王国-1-







 紗雪がキルシュブリューテ王国を目指す事数週間


「ここがキルシュブリューテ王国・・・」


 ゴブリンやオークの群れに襲われている商人を助けたり、助けた令嬢から『〇〇様、お慕いしております♡(ポッ)』的なテンプレ展開などなく、無事にキルシュブリューテ王国へと続く城壁の門の前に立った紗雪が感慨深げに呟く。


 ウィスティリア王国の国王から貰った邪神討伐の報酬が手元にあるとはいえ、金は有限だ。多く持っている事に越した事はない。


 よく考えなくてもお金は大事なのだ。


 どうやってお金様を稼ぐかを、紗雪は考える。


 一番手っ取り早いのは冒険者になる事であろうか。


 だが、冒険者は身体が資本であり、ハイリスクハイリターンだ。


 冒険者として名を上げてしまったら、自分に関する噂がエドワードとギルバード・・・ウィスティリア王国に入る可能性が高い。紗雪にしてみればそれを避けたいというのが本音である。


(そうだ!ネットショップで買った商品を売り捌けば簡単に大金を稼げるんじゃないかしら?)


 幸か不幸か分からないが聖女召喚に巻き込まれてしまった時に付与されたのか、紗雪には日用品から食料だけではなく一軒家が購入できる【ネットショップ】というスキルがあった。


 問題は何を、どれくらい用意して、どの店に卸すかだ。


 塩や胡椒といった香辛料と石鹸が異世界で商売するのに王道だと思うのだが、確か石鹸はウィスティリア王国では国の管理下に置かれていた。


 キルシュブリューテ王国はどうなのか分からないが、ウィスティリア王国のように国が管理しているのであれば、石鹸を売るのは止めた方がいいだろう。


 では、香辛料はどうだろうか?


 中世で香辛料は黄金と同じくらいの価値があった。


 臨時収入ならともかく、それ等を定期的に卸すとなると、探りを入れられそうな気がするので、塩と胡椒といった王道の商品は避けた方がいいような気がする。


 家庭用の調理器具、平民向けの服やアクセサリー、化粧品、ランジェリー、携帯食品──・・・。


 色々な商品が浮かんでは消える。


「・・・・・・何を売るかを考えるよりもまず、入国するのが先だわ」


 キルシュブリューテ王国に入国する為、紗雪は列に並ぶ。










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