⑯カステラとコーヒー-1-
カステラを試作しようとしたのだが、必要な食材である卵と砂糖がなかったので、二人は買い出しに市場へと向かう。
(た、高価い・・・)
卵が一個で四ブロンズ。
砂糖が一キロで一シルバと六ブロンズ。
それぞれを日本円に換算すると四百円と千六百円という事実に、カステラを作る為に必要な材料を買いにレイモンドと市場に来ている紗雪の顔から血の気が引いていく。
(やはり、お金様を持っている者が世界の勝者にして強者なのね)
しかし、同時に卵と砂糖を使って作ったお菓子が王侯貴族や金持ちしか口に出来ない事実にも納得していた。
・・・殿!
「紗雪殿!」
「レイモンドさん!?」
【郷に入っては郷に従え】という言葉があるように、キルシュブリューテ王国で生きて行く為にも価値観を受け入れていかないといけないのに、日本人としての考えで食材を見ていた紗雪は自分の名前を口にするレイモンドの声に驚いてしまう。
え~っと・・・
「カステラの材料は全部揃ったの?」
考え事をしていた紗雪であったが、市場に来た目的は覚えていたのでレイモンドに尋ねる。
「ああ。後は家に帰ってカステラを作るだけだ」
「レイモンドさん、荷物は私が持つわ」
「紗雪殿。レディファーストではないが、こういうのは男の役目だ」
「・・・ありがとう」
邪神・サマエル討伐の折に収納ポーチを貰ったのだが、人の手で作った魔道具には限度がある。
収納ポーチに入りきれなくなった荷物=聖女共が買った無駄な物品は、魔力がないという理由だけで役立たず扱いされていた紗雪が持っていたのだ。
エドワードとギルバードから女の子扱いされても嬉しくないが、レイモンドの気遣いと優しさを嬉しく思う。
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