⑯カステラとコーヒー-2-
(このオリーブオイルは匂いがきついからダメ。このオリーブオイルは匂いが弱い。・・・うん、これでいいわね)
紗雪がカステラを焼く為の型にオリーブオイルを塗ったり、オーブンを温めたり、材料を分量通りに準備している間、レイモンドはカステラの作り方が書いているページに目を通していた。
まずは・・・卵は卵黄と卵白に分ける。
それから、卵白はハンドミキサー・・・泡立て器の魔道具の事か。それで混ぜて、大きな泡が立ったら砂糖の四分の一を入れる。
砂糖を入れたら円を描くように泡立て器を動かしながら二分泡立てる。それを四回繰り返し、砂糖を全て入れたら更に角が立つくらいまで泡立てる。
(これって、メレンゲ・・・だよな?)
読んでいくうちにメレンゲを作っていくのだと分かったレイモンドは、本に書いている通りに従い割った卵の卵白を大きめのボウルに、卵黄を別のボウルへと分ける。
卵白が入っているボウルに砂糖の四分の一を入れると、泡立て器の魔道具でボウルに入っているそれ等を混ぜていく。
その動きは正に料理を作る事に慣れている人間のものだった。
(レイモンドさんって・・・本当に器用ね)
オーブンを温めている間、カステラの生地を作っているレイモンドの隣で蜂蜜が入っている容器に熱湯を注いでいる紗雪が心の中で感動の声を上げる。
十分後
(次は・・・溶いた卵黄を三回に分けてメレンゲに入れるか)
泡立て器に持ち替えて卵黄を溶きほぐし、卵黄の三分の一をメレンゲが入っているボウルに加えたレイモンドは、まんべんなく混ぜていく。
ボウルに残っている溶き卵を二回に分けて入れていく度に、先程と同じように混ぜる。
(卵黄と混ぜたメレンゲに熱湯で溶いた蜂蜜を二回に分けて注いだら泡立て器でさっと混ぜたら強力粉・・・強力粉というのはパン用の小麦粉の事だったな。それを三回に分けて入れたら、粉っぽさがなくなるまでさっくりと切るように混ぜ合わせると)
紗雪が作ってくれていた蜂蜜を注いで泡立て器で軽く混ぜた後、彼女が三つに分けてくれていた強力粉の一つをボウルに加えると、泡立て器からゴムベラに持ち替えたレイモンドは底から生地を持ち上げるようにしながら、さっくりと切るように混ぜていく。
(カステラって意外と手間がかかるお菓子だったのだな)
エレオノーラが主催するお茶会を成功させる為というのも理由の一つだが、紗雪の故郷の料理とお菓子を広めたいという思いがレイモンドにはあるので自分に対して気合いを入れる。
粉っぽさがなくなった生地にパン用の小麦粉を加えて切るように混ぜ合わせる事二回。
「後はこの生地を濾しながら型に入れて焼けばカステラの完成という訳か」
紙を敷いているパウンドケーキ用の型の上にこし器を置くと、ボウルに入っている生地を五回に分けて流し入れる。
生地が入っている型を掴んだレイモンドは、それを調理台に落とす。
これは空気を抜く為である。空気を抜かないと、きめの細かいカステラにならないと書いているのだ。
空気を抜いた後、表面を平らにならした生地が入っている型を天板に乗せると百六十度に温めたオーブンで焼いていく。
「焼き上がるのは、一時間十分から一時間二十分後か」
「レイモンドさん。カステラって一晩寝かせておかないと、しっとりとした食感にならないのですって」
本に目を通している紗雪が、今焼いているカステラはすぐに食べられない事をレイモンドに教える。
「・・・・・・試食は明日になるという訳か」
「そうなるわね」
(レイモンドさんがロードクロイツの食材で初めて作ったカステラ・・・楽しみ~)
「♪」
生地が膨らみ焼けていく様子を眺めている紗雪の顔には笑みが浮かんでいた。
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