⑱異世界といえばマヨネーズがお約束-4-







「何で水っぽくなるのよ!」


 あんた達、あたしの言った通りに作ったの?!


 例によって例の如く、茉莉花はエドワードとギルバードと共にキャッキャウフフをしていたのだが、侍女からマヨネーズが出来たという知らせを受けたので彼等と共に厨房へと向かった。


 しかし、茉莉花が目にしたのはクリームのような見た目になる筈なのに、ドレッシングのようなものになってしまった物体であった。


「さぁ?私達は聖女様が仰った通りの材料を混ぜただけです」


「何せ、俺達は文化レベルの低い世界で育った人間ですからね」


「文化レベルの高い異世界で育った聖女様とは頭の出来が違う俺達に、マヨネーズという万能調味料とやらが作れると思いますか?」


 高度な文明を持つ世界で育った頭の良い聖女様であれば、俺達が作れなかったマヨネーズとやらを簡単に作れるのですよね?


(くっ!)


「分かった!分かったわよ!あたしがマヨネーズを作ってやるわよ!!」


 先程の自分が言った言葉を皮肉で返された茉莉花は、料理人達を睨みつけながらもマヨネーズ作りに取り掛かる。







 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 マヨネーズは、酢・塩・油・生卵の黄身をボウルに入れたら泡立て器で混ぜる。それでマヨネーズが出来るはずなのだ。


 実際は、酢・塩・油・生卵の黄身を泡立て器でかき混ぜた後、油を少しずつ入れて混ぜ合わせるというのを何度か繰り返し、クリーム状になったら完成である。


 しかし、それを知らない茉莉花は全部の材料を計量する事なくボウルに入れる。


「卵を生で使うとは!」


「マリカ、正気ですか!?」


 卵を生で食べたらどのような目に遭うのかを知っているエドワードとギルバードは必死になって茉莉花を止めるのだが、彼女は日本ではこれが普通なのだと言って二人を押し切ると泡立て器で混ぜていく。


 エドワードとギルバード、そして料理人達が見守る中、ボウルに入っている材料を混ぜていく事一時間


「何で?何でマヨネーズが出来ないの?!」


 茉莉花の目の前にあるのは、ドレッシングのような物体だった。



 商業ギルドにマヨネーズを登録して一獲千金!


 料理革命を起こしたあたしは【食の改革者】や【美食の女神】として讃えられるはずだったのに!



 自分が作ろうとしていたものと全く異なる物体が出来てしまった事に、茉莉花は声を荒げて不平不満を漏らすのだった。








※本来は茉莉花が作ったマヨネーズを食べた人達が嘔吐やお腹を下す、一部が食中毒になって死んでしまうという展開でした。

スマホを使えば茉莉花でもマヨネーズを作れたでしょう。

だが、ここは食文化がルネサンス前。過去の迷い人や召喚された人達のおかげである部分は二十一世紀並みだというのに通信関係は進んでいない歪な異世界。当然スマホなんて使える筈がないので、茉莉花はマヨネーズの作り方を調べられず結果、完成に至りませんでした。










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