⑱異世界といえばマヨネーズがお約束-3-







「マヨネーズを作って欲しい?聖女様、マヨネーズって何なのですか?」


「どんな不味い料理も美味しくする万能調味料よ!」


 遠回しではなく直球で自分が作る料理は不味いと断言された総料理長は茉莉花に対して腹を立てるが、目の前に居る少女は生意気で態度も高飛車で尊大だが、邪神・サマエルを倒してウィスティリア王国を救った英雄なのだ。


 彼女の機嫌を損ねる訳にはいかない。


 総料理長は内心で怒りながら茉莉花にマヨネーズの作り方を尋ねる。


「確か・・・お酢と塩と油と生卵の黄身を混ぜたらいいのよ」


 胡椒を入れるバージョンもあるみたいだけど、その辺はあんた達に任せるわ


「た、卵の黄身を生で?!」


 日本では卵かけご飯や納豆のように生卵をかけて食べるが、それは徹底した鮮度管理が成されているからこそ出来る行為なのだ。


 生で食べたらお腹を壊すか、最悪のパターンとして食中毒で命を落としてしまう卵を生で使うという茉莉花の言葉に、厨房に居る料理人全員が顔を顰める。


 彼等にとって卵とは火を通して食べる物である。それがウィスティリア王国の常識なのだ。


「そうよ!おかしい?」


 これだから文化レベルの低い異世界で育った原始人的なあんた達は馬鹿だから困るのよ!!


 このクソアマ!!!


 心が一つになった料理人達は、表立って口には出さないものの茉莉花を罵る。


「という訳でさっさとマヨネーズを作って頂戴!」


 自分が言いたい事だけを言って厨房を出て行った茉莉花に命じられた料理人達は、マヨネーズ作りに取り掛かる。







※紗雪がサンドイッチを作った時に使ったマヨネーズ、厚焼き玉子、豚の角煮を作る時に使った卵、美奈子の希望で玉子焼きを作った時に使った卵はネットショップで買ったものです。








 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 マヨネーズを作るのに必要な材料は、酢・塩・油・生卵の黄身だと茉莉花は言っていた。


 調味料と食材はあるので問題はない。


 だが、初めて耳にしたマヨネーズという謎の万能調味料とやらの作り方を知らない料理人達は頭を悩ませる。


「マヨネーズってどうやって作るんだ?!」


「俺が知る訳ないだろ!!」


「あの性悪女は混ぜればいいって言っていたから、適当に混ぜたらいいんじゃねぇの?」


「けどよ、そのマヨネーズっていうの?をかけた奴を食べて陛下達が腹を壊してしまったら、死んでしまったら誰が責任を取るんだ?」


「国を救った英雄様に取って貰ったらいいんじゃねぇ?或いは聖女様の下僕と化した王太子様と騎士様とかさ」


「違えねぇ!」


 厨房から姿を消した茉莉花を嘲笑しながら料理人達はマヨネーズを作り始める。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る