⑱異世界といえばマヨネーズがお約束-2-







「!!」


 何時の間にうたた寝をしてしまったのだろうか。


 目を覚ました茉莉花の心臓が早鐘のように打っていた。


 スーハー・・・


 スーハー・・・


「魔法の一つも使えない分際であたしを見下すなんて!!」


 篁さんの癖に生意気なのよ!!!


 クズが!!!


 深呼吸をする事で落ち着きを取り戻した茉莉花は枕を殴りながら、今はこの場に居ない紗雪を口汚く罵る。


「・・・まぁ、あいつは今頃どこかで野垂れ死にしているわね、きっと」


 これも聖女である自分を見下した罰なのだ。


 言うなれば、神の裁き。


 はぁ~っ・・・


「すっきりした~」


 本当であれば侍女を殴ったり鞭で打ったりして気分をすっきりさせたかったのだが、彼女達はいなかったので枕に八つ当たりする事で茉莉花はストレスを解消した。


「そういえば、二~三時間もすれば晩ご飯なのよね」


 日本と比べたら遥かに低レベルな異世界の不味い料理を食べなければならないという事実に、茉莉花はウンザリした顔になる。


「何で異世界のパンって固いの?肉と魚には塩と胡椒といったスパイスを多く使う事が贅沢で美食だと見做されるの?」


 何かこう・・・日本の料理や調味料を広められないかしらね?


 ベッドの上に寝転びながら茉莉花は考える。


(ラノベで異世界と言えば・・・剣と魔法が存在する世界で、文化や文明は中世ヨーロッパレベル。それで、召喚とか転移した日本人が色んな方面で無双するというのがお約束だったりするのよね~。例えば、マヨネーズを作って低能な異世界人をあっと驚かせるとか)


「ってそうよ!あたしが異世界に料理革命を起こせばいいだけの話じゃない!!」


 まずはマヨネーズから!


 マヨネーズを商業ギルドに登録すれば大金を稼げる!


「♪」


 ここはウィスティリア王国。日本のように生で卵を食べられるくらいに文明のレベルが高い訳がない。だと言うのに、後から入って来る金と自分を讃える名声しか頭にない茉莉花は厨房へと向かう。









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