㉗ちくわパンとカルツォーネ-3-







 料理人達の一部が紗雪に見守られながら片栗粉を作っている頃


(筋が多いマグロには随分と世話になったな・・・)


 新人冒険者だった頃の自分は今のように大金を稼げず、平民にとって貴重な栄養源である安い鰻、筋が多いマグロや脂が乗っているマグロを干物にして食べる事で飢えを凌いでいた昔を思い出しながらレイモンドはマグロのオイル漬けを作っていた。


(異世界・・・日本ではマグロを生で食べるらしいが、腹を壊さないのか?)


 本で見たマグロの刺身には筋がなかった。


 だが、今回のマグロのオイル漬けを作る為に買ったマグロは筋が多い部分だ。


 筋の多いマグロは火を通せば気にならないが、そのマグロを生で食べるとなると筋の多い肉のように噛み切るのに、また嚥下するのも苦労するはずだ。


 生で魚を食べた事がないので分からないけど。


(今度、紗雪殿に聞いてみるか)


 そんな事を思いながらレイモンドがマグロを火の通りやすい厚さに切った後、皿に置いたマグロの両面に塩を振った。


 これはマグロの水分を切る為なので暫くの間放置しておく。


 その間に、オイルに浸けるマグロを入れる為の容器の煮沸消毒、ローリエと粒胡椒とオリーブオイル、ニンニクの薄切りといった下準備をしていく。


 三十分後


 鍋にマグロと薄切りにしたニンニク、粒胡椒、ローリエを入れた後、マグロが浸かるくらいにオリーブオイルを注いでから弱火で煮込んでいく。


(そろそろ裏返さないとな)


 表面の色が白くなったマグロを裏返すと様子を見ながら弱火で温める。


(後はこれを容器に移して冷蔵ボックスで数時間寝かせたら完成だな)


 煮沸消毒を済ませた容器に入っているオイルとマグロを冷蔵ボックスに入れた。


「紗雪殿、マグロのオイル漬けは作り終えた。俺に手伝える事はあるか?」


「そうね・・・。昨日作った元種を使ってパンとカルツォーネ、包みピザの生地を作ってくれないかしら?」


 手の空いているレイモンドと料理人達が、元種を使ってパンとカルツォーネの生地を作る。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る