㉗ちくわパンとカルツォーネ-2-







「今日は試食用のカルツォーネを作るのですが、その前に明日に試食するちくわパンのちくわがどういうものなのか簡単に説明したいと思います」


 ちくわというのは魚のすり身を練ったものでテリーヌ・・・いや、固めたパテを思い浮かべてもらえれば、どのような料理なのかイメージ出来るのではないかと、シュルツベルク家の厨房では紗雪が料理人達に語る。


 紗雪の言葉に料理人達は何となくだが、ちくわがどのような料理なのかを思い描く事が出来た。


「そのちくわを作るのに必要な材料は鱈と卵白と塩と砂糖、そして片栗粉です」


「片栗粉って・・・八宝菜と竜田揚げを作った時に使ったあの白い粉の事か」


 八宝菜にとろみをつける為に水で溶いた、揚げ物を作る時に塗していた白い粉を入れていた事をレイモンドは思い出す。


「その白い粉・・・片栗粉はカタクリという、俺は実物を見た事がないので断言できないが、その木の実を挽いたものではないのか?」


「昔は山慈姑くわいの根から採っていたらしいけど、自生している山慈姑が激減したから作られなくなってしまったの」


 山慈姑の代用として使ったのがジャガイモで、現在の日本ではジャガイモで作った白い粉が主流となっておりそれを片栗粉と呼んでいるのだと、ジャガイモ澱粉と呼んだ方が正しいのかも知れないと、小麦粉のように水車小屋で挽いた粉だと思っているレイモンドに紗雪が教える。


「このジャガイモがあの白い粉になるとは・・・」


 ジャガイモを手に取ったレイモンドがしみじみと呟く。


「そこで皆さんには今から片栗粉を作って貰います」


「何で?!」


 自分達は今からちくわという料理を作るはずなのに、どこをどうすれば片栗粉作りへと繋がるのか


 料理人達だけではなくレイモンドまでもが紗雪に対して一斉にツッコミを入れる。


「片栗粉ってハンバーグで言えばつなぎのようなものなの」


「そういう事か」


 紗雪の一言で片栗粉を作る意味を理解出来たレイモンドが納得したように呟く。


「どういう事?!」


 再びツッコミを入れる料理人達にレイモンドが、つなぎの役目を果たすものを入れないと一つに纏まらない事を話すと、彼等は何となく意味を理解出来たらしく納得したような声を上げる。


「まずは、ジャガイモの皮を剥いて摩り下ろしたら清潔なさらしに入れて欲しいの」


 それから、水を張ったボウルに摩り下ろしたジャガイモが入っているさらしを入れて十分くらい揉んだ後、十五分放置


 十五分経ったら、底に沈んでいる白いものが零れないように水だけを捨てたら再びボウルに水を張る


 それを二回繰り返すと水が透明になるから、その水を捨てて底に沈んでいる白いものを大きめの皿に入れて解したら半日から一日放置。


 片栗粉の完成である。


 話を聞いて新しい調味料に興味を抱いた料理人達が紗雪の指示に従って片栗粉を作り始める。









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