⑭その頃の聖女-5-







「聖女のに騙されるとは・・・ウィスティリア王国の王太子って人を見る目がないのね」


 あんな馬鹿が次期国王だなんて、ウィスティリア王国に未来はないわね


 うんうん


 茉莉花が流していた涙は嘘泣きである事を見破っていたエレオノーラの台詞に、ランスロットとレイモンドが腕を組みながら頷く。


「あのような演技に騙されるからこそ、優秀なシーラ公爵令嬢とオリビア伯爵令嬢が二人の婚約者として選ばれたのでしょうね」


 シーラとオリビアが脳内お花畑な二人の男と婚約破棄をしたらしいという事実に紗雪は安堵の息を漏らすと同時に、スカーレットとリーナという新たな犠牲者を生んでしまった事に頭を悩ませる。


「紗雪殿、貴女のおかげで聖女が禄でもない女性である事がよ~く分かった。エレオノーラが言っていたように以後のロードクロイツは、迷い人と召喚された異世界人に関しては今までの制度を見直す。それだけではなく、身体検査をした上で保護する事を陛下に進言するとしよう」


 現に茉莉花の腰に赤子の霊が取り憑いていたのだ。


 という事は、元の世界での茉莉花は他人が大切にしているものを奪い取っていただけではなく、見た目では判断できなかったが性病に罹っているというのも恐らく事実なのだろう。


 もし、茉莉花のような人間が迷い人として現れていたら、今頃ロードクロイツはどうなっていたか──・・・。


 考えただけでもぞっとする。


 ぱんっ!


「難しい話はこれくらいにして、私達も冷たいデザートを楽しむとしましょうよ」


 雪を食べている三人を見ているうちに、何だか氷菓を食べたい気分になってしまった美奈子が自分の希望を告げる。


「紗雪さん、貴女のネットショップを使えばアイスクリームとジェラートを買えるのでしょ?」


「え、ええ・・・。でも、ネットショップ「紗雪殿!」


 三人にばれたら最後。


 冷凍ボックスにある自分達のアイスクリームとジェラートが食べ尽くされるのが目に見えている。


 言葉を続けようとする紗雪をレイモンドが必死になって止めようとしていた。


「「レイモンド?アイスクリームって何?ジェラートって何?」」


 さては・・・お前は父に内緒でアイスクリームとジェラートとやらを食べていたのだな?


 アイスクリームとジェラートが何なのか分からないが、夏になれば蜂蜜や果実水、果物をトッピングしている雪や削った氷、凍らせて削った果実水や牛乳よりも美味しい食べ物なのだ!


 そうに違いない!


 いや、そうに決まっている!と訴えている勘に従ったランスロットとエレオノーラが青筋を立てながらレイモンドに詰め寄る。


「父上・・・母上・・・」


(こ、恐い・・・)


 二人の形相と迫力に負けてしまったレイモンドが涙目になりながら、アイスクリームとジェラートが何なのかを話す。










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