㉖酵母-6-







 レイモンドがカスタードクリームを作っている頃


「今日と明日に作るシーフードピザに使うけど、ホワイトソースは煮込み料理やパスタ、揚げ物にも使えるの」


「ソースが揚げ物に?」


 ソースといえば肉や魚にかける調味料というイメージがあるからなのか料理人達は疑問を抱くのだが、考えてみれば紗雪は異世界人。


 異世界にはそのような料理があっても不思議ではないと思い直す。


「ホワイトソースに必要な材料は製菓用の小麦粉、バター、牛乳、塩、胡椒」


 これが基本となるのだが、顆粒ブイヨンか粉末昆布を加えると違った味わいになるのだと、料理人達に話ながら紗雪はホワイトソースを作る準備を始める。


 戸棚から取り出したのは塩と胡椒と製菓用の小麦粉、冷蔵ボックスから取り出したのはバターと牛乳だ。


 フライパンに適当な大きさに切ったバター、製菓用の小麦粉を入れて弱火で熱し、木ヘラでひとまとまりになるまで炒める。


 炒めた製菓用の小麦粉が入っている鍋に牛乳を少しずつ加えて混ぜながら弱火で加熱していく。


「これくらいでいいかな?」


 混ぜていくうちにとろみがついてきたので、紗雪はホワイトソースに塩と胡椒を加えて味を調える。


 へぇ~っ・・・


「これが煮込み料理や揚げ物に使えるホワイトソースですか」


 野菜と一緒に煮込めばスープとして、焼いた魚にかければソースとして使えそうだと、紗雪が作ったホワイトソースを見た料理人達は新しい料理を考え始める。


「レイモンドさん、生地の発酵が出来ていると思うの。二つの生地を適当な大きさに切って伸ばしてくれないかしら?」


「生地の形は四角でもいいのか?」


 本で見たピザは丸い形だったものだから、レイモンドは紗雪に尋ねる。


「理想は丸い形だけど、初めて作る料理だし何より試食用だから四角い形になってもいいんじゃないかしら?」


「その辺りは臨機応変にやればいいな」


 打ち粉をした板に生地を乗せたレイモンドは麺棒で伸ばしていく。


「す、凄い・・・。レイモンドさんって本当に器用ね」


 今回初めて作る料理であるはずなのに丸い生地を作ったレイモンドに、酵母液を使った生地でパンを作っていた紗雪は思わず感心した声を上げる。


 レイモンドの場合、慣れと言えばいいのか、新人冒険者だった頃から現在に至るまで自炊をしているからこそ身に付いたのかも知れない。


「紗雪殿、伸ばした生地に具材を載せてくれないか?」


「ええ」


 酵母液を使った生地にカスタードクリーム、形を整えたパン、酵母を使っていない生地にホワイトソースと海老と烏賊とチーズを乗せたら温めておいたオーブンで焼いていく。







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