⑳冷製パスタ-5-
「スープが円やかで甘い?」
「これは、とうもろこしのスープ?」
「このスープ、パンとの相性がいいと思いますわ」
「パスタが冷たくて硬い?いや、このパスタは適度な弾力があるんだ」
時間をかけて茹でる事で伸びているのがパスタの常識だと思っていたグスタフは驚きに満ちた声を上げる。
「私、こっちの硬めのパスタの方がいいと思いますわ」
「生ハムの適度な塩気とオリーブオイルがパスタに絡んでいるけど、味付けがあっさりしているから食が進むわ・・・。暑い夏にぴったりのパスタ料理ね」
「このオムレツ、溶けたチーズとジャガイモの食感がいい味を出しているな」
「父上が異世界の料理に執着している理由が分かります」
四人は黙々と料理を口に運んでいく。
「デザートでございます」
普段より満足そうな笑みを浮かべて料理を綺麗に平らげてしまった四人がいる食堂に、料理を運んだ給仕とは別の給仕がキッチンワゴンを押して入ってくる。
給仕が四人の前にアイスクリームと煮出しコーヒーがそれぞれ別々に入っているカップを置いていく。
「これは・・・アイスクリーム!」
自分の中でお気に入りとでもいうべきアイスクリームが出た事で、思わずエレオノーラの声が弾む。
「レイモンド様とサユキさんが仰るには、アイスクリームに煮出したコーヒーをかけて食べるデザートだそうです」
四人はクリフォードの言葉に従い、アイスクリームが入っているカップに煮出しコーヒーを注ぐと、スプーンで掬ったそれを口に運ぶ。
「これ・・・アイスクリームとやらのコクと程よい甘さ、そしてコーヒーの苦味が一つになった上品なデザートですわ!」
「アイスクリームってそのまま食べる物だと思っていたのだけど、コーヒーをかけて食べる事も出来るのね」
自分達が今まで食べていた料理とデザートは何だったのだろうか?
洗練されている料理にグスタフとアルベルディーナはショックを受けると同時に、ランスロットとエレオノーラが紗雪をどこかの貴族の養女にした上でレイモンドに嫁がせるべく行動を起こしていたのだと納得していた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「このアイスクリームだけでも甘くて冷たい美味しいデザートなのに、コーヒーを入れる事でまた別の味わいになるだけではなく、全く別のデザートになるのですね」
「サユキさん、アイスクリームの作り方を教えて貰えませんか?」
四人が食堂で異世界の料理を堪能している頃
厨房ではレイモンドと紗雪、そして料理人達がアフォガートを楽しんでいた。
「生クリームとバニラビーンズかバニラエッセンスを使っていないアイスクリーム・・・この場合はシャーベットになるのかしら?それだったら何とかなると思うわ」
今回は食後のデザートが思い浮かばなかった事と、殺菌していない牛乳は早く使い切った方がいいという思いで、メニューの組み立てと作る順番を間違えてしまった。
現地にある食材を使って、日本であれば簡単に食べられる料理の再現が難しい事と、手元にある食材を計算して料理とデザートを作る事が出来る料理人って偉い!
改めて、料理の奥深さを感じる紗雪であった。
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