㉑シュルツベルクへ-1-
「紗雪殿、二日後にシュルツベルクに行く事になった」
「分かりました・・・」
ランスロットが紗雪を貴族の養女にするのは、彼女がこの世界で生きて行く為に必要な戸籍と後ろ盾を得る手段なのだ。
(何だか不思議な気分だわ)
一般庶民である自分が異世界召喚に巻き込まれただけではなく貴族の娘になるなんて──・・・。
(まるでラノベ展開を見ている気分ね。・・・あっ、私だけではなく霊剣・蜉蝣の使い手であったご先祖様達の能力と立場って、ラノベの主人公になってもおかしくないものだったりするのよね)
自分の身に起こっている事に対して、紗雪が心の中でツッコミを入れる。
(そんな事はどうでもいいのよ!今の私がやるべき事と言えば・・・旅に出ている間に食べる料理を作って、ロードクロイツ家の料理人達に洋食系の料理とお菓子の作り方を教えて・・・。それから、調味料を入れ過ぎない事と身体の事を考えて野菜を摂った方がいい事と、パスタは種類によって茹でる時間を分けた方がいい事を教えて・・・。それ以外に教える事ってあったかしら?そうだ!旅に出ている間の料理だけではなく顆粒ブイヨンも作らないと)
今回の旅はランスロットとレイモンドが同行する事になっている。
という事は、ロードクロイツ家の料理人達に異世界の料理を教える人間がいないのだ。
あっ・・・
「レイモンドさん、お茶会に出すカステラの作り方を料理人達に教えないと侯爵夫人が恥をかく事になるわ」
自分達が試作したカステラはもうないのだ。
新たなカステラを作る為、紗雪はレイモンドの手を引いて厨房へと向かう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
二日後
(お、お尻が痛い・・・)
昔の馬車は乗り心地が悪かったと聞いた事があるが、それは事実だった。
(それなのに、何であの二人は平然としていられるの?)
慣れ!?
これは慣れって奴なの!?
表情を変えずに窓から見える景色を眺めているランスロットとレイモンドに対してそう思ってしまった紗雪であったが、二人を霊視してみたところ、どうやらそうではないらしい。
貴族としての教育の賜物なのか、ランスロットとレイモンドは、例え馬車の乗り心地が悪くてもそれを面に出さずにいる事が出来るだけなのだ。
(馬車って売っていたかしら?)
この状況を何とかしたいと思っている紗雪は、ネットショップで馬車を買う事が出来るかどうかを確認してみる。
当然と言えばいいのか、やはりと言えばいいのか、馬車は売っていなかった。
馬車用のソファーを買ったら何とかなるかも?と思ったが考えてみれば、いや、考えなくても取り付け方が分からないので紗雪はソファー購入を却下した。
(クッションがあれば何とかなるかも)
紗雪は馬車の内装を損ねないクッションカバーとクッションを購入していく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます