⑪豚の角煮-4-
『異世界には便利なものがあるのだな』
これだけで出汁が取れるという事実に、レイモンドは感心の声を上げて驚く。
『紗雪殿。昨日のミソシルはトーフだったが、今回の具材は何なのだ?』
『今日の味噌汁の具材は・・・キャベツです』
キャベツとミソシルは合うのか?という疑問を抱いたランスロットとレイモンドであったが、異世界の料理に関しては紗雪の方が知っているので自分達は何も口出ししない方がいいだろうと思った二人は、彼女が作っていくところを黙って見る事にした。
圧力鍋の錘が沸騰した事を知らせたので弱火にしてニ十分煮込んでいる間に、水に浸けて冷ましておいたゆで卵の皮を剥いていく。
二十分後
火を止め、圧力鍋の蓋を開けると臭い消しの為に入れていたネギを取り出し、ゆで卵を入れる。
『これでブタノカクニとやらが完成したのか?』
『タレがゆで卵に染み込んだら完成よ』
ゆで卵に味が染み込むのを待っている間に、白菜の浅漬けを切って皿に盛り付ける。
『ショーユというのは、玉子卵焼きだけではなく煮込み料理にも使えるのだな』
『隠し味としてだけではなく、クッキーのように甘い焼き菓子にも使えますよ』
醤油を使った甘い焼き菓子が想像できないランスロットとレイモンドは首を傾げるしかない。
『ところで紗雪殿。ショーユの作り方をロードクロイツに広めてくれないだろうか?』
半分はロードクロイツ家の食卓を豊かにしたいという個人的な思いだが、もう半分は醤油という調味料が新たな産業になると踏んだのだろう。
ランスロットは紗雪に醤油の作り方を教えて欲しいと頼むのだが、紗雪は自分が醤油の作り方を知らない事と、醤油作りにおける問題点を挙げる。
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