⑨その頃の聖女-2-
「あの女は私が作った料理の何が気に食わないんだ?!」
不味くて食べられない!
今すぐ作り直せ!
聖女の不満を侍女達から告げられた王宮の総料理長は、高価な香辛料や砂糖をたっぷり使って作った自分の料理にケチをつける、厨房に居ない茉莉花に対して文句を垂れる。
「聖女様・・・いえ、あのチビで貧乳の小娘が言うには、『香辛料を使い過ぎて舌が麻痺しそう!』とか『砂糖の塊を食べさせるなんて、あたしを糖尿病にしたいの?!』だそうです」
「私が作った料理が食べたくないのであれば、自分で作ったらいいんだ!!」
茉莉花は聖女であり、救国の英雄である。
だからこそ、総料理長は彼女の為に心を込めて朝食・昼食・夕食を作っているのだが、その度に不満しか漏らさないのだ。
遂に堪忍袋の緒が切れた総料理長は聖女・・・いや、チビで貧乳の小娘の為に二度と料理を作らないと顔を真っ赤にして宣言すると、エプロンを外して厨房を出て行く。
厨房に残されたのは、聖女付きの侍女と料理人と見習いの者達だけ──・・・。
「あの、俺達の賄いで良ければ」
見習いの一人が侍女に声を掛ける。
「・・・お願いできるかしら?」
見習いは聖女の為にベーコンと野菜のスープ、白パンを用意するのだが、今度は『味付けが薄すぎる!』『白パンなのに固い!』と、再びちゃぶ台返しならぬテーブル返しをされるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あの女・・・篁さんを追い出したのは痛かったわね」
王宮で出している料理がこんなに不味いと知っていたら、篁さんを雑用兼サンドバッグとして置いといたのに!
一代で成り上がったとはいえ社長令嬢として育った茉莉花は自分が望むものは何でも与えられ、周囲からちやほやされていたからなのか、上から目線のマウント女となった。
常に自分が一番でないといけない茉莉花は自分の可愛らしい外見を利用しては男に貢がせるわ
不特定多数の男と寝るわ
彼女がいる男を寝取るわ
自分より美人な女は取り巻きに暴行を加えさせるわ
相手が訴えようものなら父親の力を利用して黙らせる等々──・・・。
高校時代に望まぬ妊娠をしたので堕胎をしたものの、他人が大切にしているものを奪う事を楽しみにしている茉莉花の人生は順風満帆と言っても良かった。
そんな彼女の人生に人生の転機が訪れる。
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