僕はもふもふ家族院の院長先生!!

和成ソウイチ@書籍発売中

第1話 天宮ユウキの願い事


 誰かの役に立ちたかったな――と天宮ユウキは思った。


 病床。

 周囲には様々な医療機器が並び、ユウキ少年の小さな身体に繋がっている。

 しかしそのすべてが、もうユウキの命を繋ぎ止めておくことができなくなっていた。


 生まれてすぐに重い病を患った彼は、病室から外へ出たことがない。病院の廊下をぐるりと一周できれば、「ああ、今日は調子が良かったな」と思えるくらい。

 誰かの世話になり、誰かに迷惑をかけ続けなければ、生きていけない身体だった。


 ――意識がぼんやりとしてくる。

 ユウキはずっと願っていた。

 もしも生まれ変わったら、色んな人にずっと迷惑をかけていた分、色んな人の役に立とうと。


 治療はつらかった。検査もつらかった。手術はすごくつらくて、眠れないのもすごくつらい。食べ物が喉を通らないのも同じくらいに、つらい。

 そしてなにより、誰とも一緒にいられないのがものすごくつらかった。


 だからこそユウキは信じている。生きているだけでも幸せなのだと。

 その上で誰かの役に立てたのなら、きっともっと幸せだろうと。


 ――視界が真っ白に染まっていく。

 苦痛がすーっと抜けていったとき、彼は天使の光を見た。

 お迎えがきたと感じた彼は、かさついた唇でつぶやいた。


「生まれ変わったら……誰かの役に……立てますように」


 それが、天宮ユウキ最期の言葉となった。


 享年、10歳である。






『……ぐすっ。なんて健気な子なのかしら。大丈夫。あなたの願いは、私が必ず叶えましょう。ええ。必ず!』


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