三花繚乱　～女神は世界の終わりを望む～

魔獣が跋扈する大陸に、時の流れの歪んだ大陸、千切れて空に浮かんだ大陸など、十二の大陸が広がる世界。
その中の一つ、花から生まれる華族が支配する大陸で、十一歳の少女が、春を求めて終わらない冬の中を歩いていた。

春は上古から存在し続ける上級精霊である四季の一人であり、彼ら四精霊が世界十二大陸を歩き続けることで季節は廻り、花は咲き、人々は豊かに暮らしていた。
だがその年、冬が通り過ぎても、一向に春が現れなかった。
春が訪れなければ雪は解けず、冬芽は開かず、麦は穂を付けず、春野菜も収穫できない。人々は飢え、人心は乱れ、争いも終わらない。
ある理由により閉じ込められていた少女は、母からの頼みを受け、初めて外の世界に旅立った。
その身に宿した抗えない血と、忌むべき力に翻弄されながら、少女は歩み続ける。…続きを読む