第43話 間接

 コーヒーカップ、オクトパスなどの激戦を終え……。


 何とか、お昼の時間を迎える。


 古民家風の洋食屋さんに入り、メニューを頼む。


「おっふ……」


「ん、大丈夫?」


「お兄ちゃん、どうしたお?」


「な、なんでもないよ」


 いやぁ……コーヒーカップとか他の乗り物とか、あんなに怖かったっけ?

 小学生くらいの時は何回でも乗ってたけど……。

 まあ、来たのは小学生高学年の頃以来だからなぁ。




 すぐに注文の品が届き……。


「「「いただきます」」」


「オムライスおいちい!」


「うん、美味しいね」


「ん、シンプルで良い。卵フワトロでデミグラスソースも美味しい」


 ……なんか、俺にとっては当たり前のことだけど……。

 飲食店でも、食べる前に『頂きます』って言う女の子って良いよね。


「うちはこういうの作らないからなぁ」


「お魚さん! お野菜さん! お肉さん! お味噌汁さん!」


「ん……どういうこと?」


「基本的に和食が多いんだよね。あと一汁三菜というか」


「ん、それは良いこと。健康のためには良い」


「うん、そうなんだよね。ただ、たまにこういうの食べたくなるよね。だから外食時は洋食って決まってるんだ」


 小さい頃は嫌だったこともある。

 でもお陰で風邪をひくことも滅多にないし、これといった病気にもかかったことはない。

 そこんところは親に感謝しないとね。


「ん……むぅ……」


「どうしたの?」


「お姉ちゃん?」


「ん、何でもない」


 ……一瞬、迷ったような表情したけど何だったんだろう?






 食事を終えた後は、散策することにした。


 きちんと消化しなきゃだし、幸いにして色々なお土産屋さんもある。


 そしてある程度、店を見終えると……。


「お兄ちゃん! あのアイス食べたいお!」


「アイスかぁ……」


 優香の視線の先にはソフトクリーム屋さんがある。

 うーん……一人前は多すぎる。

 一人分頼んで、それを二人で分けるかなぁ。


「チョコとバニラ両方食べたいお!」


「じゃあ、ダブルにするか」


「うぅ……二個がいい!」


 ……どうしよう?

 これをわがままと言って抑えるのか、それとも甘やかしていいのか……。

 父さん……俺には難しすぎです。


「ん、大丈夫。私がチョコ頼む」


「そっか、ありがとう。じゃあ、俺がバニラかな」


「わぁーい!」


 ソフトクリームを買い、優香を真ん中にしてベンチに座る。


「お兄ちゃん! あーん!」


「はいはい、どうぞ」


「あむっ……おいちい!」


「ん、私もやりたい……あーん」


「はむっ……こっちもおいちい!」


「良かったね、優香。お姉ちゃんにお礼言わないと」


「お姉ちゃんありがとう!」


「ん……どういたしまして」


 今、すごく自然に微笑んだ?

 うん……勇気出して誘って良かった……。


「……私には?」


「へっ?」


「私もバニラ食べたい」


「い、いや、これ、俺が口つけた——あっ」


 気がついた時、すでに髪をかきあげた綾崎さんの顔が近づいてきて……。


 パクッとソフトクリームを食べてしまう。


「ん……美味しい」


「そ、そうですか」


 なにこれ!? 身体熱い!?


「お兄ちゃん? お耳真っ赤だお?」


「ん、熱でもある?」


「ほ、ほっといてくれるかな!」


 何やら髪から良い匂いしたし、間接的なアレだし……。


 はぁ……出会ってから振り回されっぱなしだなぁ。


 ……それを楽しいと思ってる自分がいるけどね。




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