2話 今更自己紹介?
……どうしよう?
思いっきり目立ってる……!
孤高の存在である彼女が、異性の手を引いて歩いている。
そりゃ……みんな見るよなぁ。
「どうしたの? 早く行こう」
「いや、どうしたの?はこっちのセリフなんだけど……」
「私は君と早く帰りたい」
「いや、そういうことを聞いてるんじゃなくてね?」
「うん、とりあえず帰ろう」
「人の話を聞いて!?」
結局そのまま、校門の外に出るのだった。
明日からの学校が……憂鬱だなぁ。
すると……途中で彼女が手を離す。
俺は……なにを残念に思っているんだよ。
「うん、この辺りでいいかな」
「えっと……」
「視線がめんどくさかったから。ここなら、もう学校の人は少ない」
周りを見ると……確かに、通学路から少し外れた場所のようだ。
「なるほど……それで、どういった意図で? 一応、急いでるんだけど……」
「君に興味がある。大丈夫、すぐに終わるから」
……落ち着け、これはどう見ても好きとかいうアレじゃない。
何か、不可思議な生き物を見る目だ。
……というか、俺もそんな感じなんだけど。
「コホン! それは、どういう意味かな?」
「……立ちっぱなしは疲れる……非効率だけど仕方ない」
「ちょっ!?」
俺は再び手を引かれ、近くにある公園のベンチに連れて行かれる。
「ここでいいかな」
「いや、近いんだけど?」
さっきから良い匂いするし……。
隠キャってほどじゃないけど、女の子と接する機会なんか滅多にないし。
「問題ない。私は気にしないから」
「ハァ……もう好きにして」
「うん、そうする」
……めちゃくちゃマイペースな人だなぁ。
ていうか、こんなに喋るところ見るの初めてだ。
「私のこと知ってる?」
「へっ? も、もちろん。もう同じクラスになってから二週間経ってるし……」
「そう。でも、一応自己紹介する。綾崎麗華、十七歳。誕生日は八月一日。趣味は映画鑑賞や読書に料理。得意なことは勉強と運動。身長167センチでスリーサイズは上から……」
……はい!? 待ったァァァ!
「ストップ——ストッープ!」
「どうしたの?」
「い、いや、こっちの台詞なんだけど……」
「カップ数の方が良かった? それならEカップ」
その言葉に……思わず視線が下に下がる。
そこには見事な双丘があった……お胸と言う名の。
うわぁ……こんなアングルで見たの初めてだ……。
「胸が好き?」
「はい!?」
「なるほど、伊藤君は胸が好きと……」
「違う違う! いや、違くないけど! 今のは『はい』ではなく疑問の『はい?』だから!」
「むぅ……難しい」
あれぇ? 綾崎さんって、こんな子だったの?
大人っぽくて知的なイメージだったけど……意外と子供みたいな表情するんだ。
「まあ、良い。はい、伊藤君も」
「な、何が?」
「自己紹介」
その目は有無を言わせずといったところだ。
自己紹介するまで帰れそうにない。
「はぁ……えっと、伊藤和馬、年齢は十七歳で誕生日は六月十日。趣味はゲームと読書、映画も見るかな。得意なことは……ないかなぁ」
「そう。ゲーム以外は一緒」
「いや、多分種類が違うから。読んでるのは漫画とか、ライトノベルってやつだし」
俺が読むのはラノベで、教室で彼女が読んでいるのはそういうものではなかった。
芥川賞を取るような作品や、映画化されている作品だった気がする。
「そう……ん、とりあえずわかった。これにて自己紹介終了」
「ほっ……良かった。これで本題に入れるね」
こうしている間にも、時間は経っている。
早く家に帰らないと……。
「それで……何が目的かな?」
「貴方、今朝何してた?」
「質問の答えになってない……」
「良いから答えて」
「何というマイペース……」
「褒められると照れる」
「いや、褒めてないから」
無表情で淡々と照れるとか……不思議な人だなぁ。
さて、今朝の俺は……何か特別なことをしてたっけ?
夕焼けの空を見上げて、俺は今日の出来事を思い出してみる……。
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