塩対応で有名な綾崎さんがモブの俺に興味津々らしい

おとら@五シリーズ商業化

突然に

1話 突然の出来事

 ……どうしてこうなったのだろう?


 俺は何故か……先程から、学年一の美少女に問い詰められていた。


彼女の名前は、綾崎麗華あやさきれいかさん。


アイドルが裸足で逃げ出すような風貌の持ち主だ。


手足は長く、スタイル抜群。


烏の濡れ羽色の長い黒髪は、傷みなど一切見当たらない。


目は大きくぱっちり二重で、輪郭も整っている。


口元は吸い寄せられるような感じの……どちらかというと、もはや美女だ。


ただ一つだけ欠点があるとすれば……人と関わらないということかもしれない。


いつも無表情だし、友達とかもいない。


本を読んでいるか……もしくは、何もせずに静かに座っている。


たまに勇気を出して話しかけても、いまいち話が通じない。


『なんで私に話しかけたの?』とか。


『その問いには意味があるの?』とか。


『この時間は無駄ではないの?』みたいな感じで……。


なので美少女ではあるが……一部では変人とも言われている。


そんな人が……何故か、地味な俺に話しかけているというわけです。


「ねえ、聞いてる?」

「えっ? ご、ごめん!」

「別にいい。それで、貴方の名前は?」

「えっ? ……伊藤和馬だけど……」

「良い名前」

「そ、そう?」


 まじか……同じクラスになって二週間とはいえ、名前さえ覚えてもらってないなんて。

 流石は、誰に対しても塩対応で有名な綾崎さんだ。

 特に彼女の言葉は、無意識に男子の心を削るらしい……今の俺のように。


「伊藤和馬君……うん、覚えた」

「それはどうも?」

「なんで礼を言うの……変な人」


 ……君にだけは言われたくないけどね。


 それより、本当にどうなってるんだろう?


 ……俺は、まごう事なき普通の男子高校生だ。


 よくラノベなんかでは、そういって普通じゃないことが多々あるけど……。


本当に正真正銘普通の男子高校生である。


 身長も170、体重も58キロ、痩せてもいないし太ってもいない。


 顔もそこまで悪くはないと思うけど……決してイケメンではないのは確かだ。


小さい妹からは『中の中の上』とかいう、訳のわからないこと言われるし。


一体、どこで覚えてきたんだか……。


「ねえ、聞いてる?」

「は、はい、聞いてます!」

「じゃあ、一緒に帰ろう」

「へっ? なんで?」

「貴方に興味があるから」


 その瞬間——クラス中にどよめきが走る。

 いつもの彼女の台詞とは思えないからだろう。


「えっと……」

「早く」

「ちょっと!?」


俺は無理矢理彼女に手を引かれ、歩き出す。


混乱する俺の頭に浮かんできたものは……。


女の子の手って、こんなに柔らかいんだなぁということだった。






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