第30話 放課後
その後、電話番号だけ交換し……。
午後の授業を終えて、放課後を迎える。
教室の中では一部の人達が残り、ゴールデンウィークの予定などを話し合っている。
綾崎さんと萩原さんは一足先に帰ったみたいで一安心だ。
これで仲良くなれたら良いよね。
さて……俺はというと。
「おいおい、なんか面白いことになってんな?」
「いや、俺は困ってるけどね?」
「かぁ〜タイプの違う美少女を連れてる男の言い草とは思えねえな」
「えっ?」
「はぁ……相変わらずだな、お前は。やっぱりわかってないのか……仕方ねえ、またお節介焼くとするか。今日は時間あんのか?」
「う、うん……今日は母さんが早く帰れるからお迎えに行くって」
「おっ、そいつは良かった。んじゃ、たまには男二人で遊ぶとするか」
「良いの? なんか、後ろから視線感じるけど……」
一部の男子と女子が、俺と浩二に視線を向けている。
そこまで嫌な視線ではないけど、好意的ってわけでもない。
何とも、微妙な感じ……何だろ?
「ああ、ほっとけ。どうせ、扱いに困ってんだろ」
「……よくわからないけど」
「ほら、行こうぜ」
そう言い、俺を教室から連れ出す。
寄り道なんていつぶりかなぁ……。
マク○ナルドに行き、注文を待っている間に、そんなことを思った。
「こういうのも久々だな?」
「そうだね。高校一年の夏前には父さんが転勤しちゃったからね」
もうすぐ一年になろうとしてるってわけだ。
もちろん共働きなので、それ以前も優香の面等は見ていた。
でも、転勤してからその比率は更に大きくなった。
優香が……泣いている姿を見たくないから。
「一番楽しい高校一年の夏をなぁ……少しは友達とかもできたんだろ?」
「まあ……ね。でも、すっかり離れちゃったよ。やっぱり、付き合い悪いとダメみたい」
「仕方ないよなぁ。どっちが悪いわけでもないし。まあ、女友達はできたみたいだけどな?」
「からかわないでよ。割と本気で困ってるんだからさ」
「悪い悪い、でも楽しそうだぜ?」
「……否定はしないかな。でも楽しいと困るんだ」
「あん?」
「そっちを優先したくなるっていうか……そんな気が起きたらどうしようって」
例えばの話、綾崎さんを好きになったとして……。
その他にも友達と遊ぶのが楽しくなったりして……。
それで勉強や優香のことが疎かになったらどうする?
まだ小説とかゲームなら家にいられるけど……他はそうはいかない。
「かぁ〜相変わらず糞真面目だな」
「酷くない?」
「褒めてんだよ。人っていうのは、普通は自分優先なんだよ。兄妹だろうが親だろうが。まあ……俺はそういうところを気に入ってるから良いけどな」
そんな話をしつつ、久々のハンバーガーを食べる。
その味は……なんだか途轍もなく贅沢で幸せな気分になった。
そのことに……少し自分が嫌になる。
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