第31話 勇気をもらう
食べ終わった後も話は続き……。
「んで、どうすんだ?」
「……どうするって?」
「これから眼鏡のかわい子ちゃんと三人で飯を食うのか?」
「メガネのかわい子ちゃんって……萩原さんのこと?」
「ああ、そうだよ。まあ、よくわかってないお前にも説明すると……それなりに人気ある女の子なんだぜ。静かでおとなしいって感じで、一部の男子からな」
「そ、そうなんだ。じゃあ、綾崎さんと合いそうで良かった」
「……ちょっと種類が違う気かもするが……まあ、合わないことはないかもな。んで、どうすんだ? また変なやっかみが来るかもしれないぜ?」
「うーん、どうなんだろ? というか、流れに任せただけというか……これで、俺がいなくてもいいかなって。だから、そういう心配もなくなるんじゃない?」
多分俺に興味持ったのも、友達がいないことが一つの原因だと思うし。
やっぱり同性の友達がいれば、そっちの方が良いと思うし……。
「……の割には浮かない顔だな?」
「……そう見える?」
「ああ、俺の目にはな。それに、誘われたらどうするんだ?」
「どうって……」
お昼の誘いを断る?
その瞬間——何故か、綾崎さんの悲しい顔が浮かんでくる。
それと共に……胸の奥が痛む。
「なるほどねぇ……恋愛とかしてる場合じゃないって感じか」
「だって、勉強だってあるし……優香だって」
「おいおい……それを言い訳にしちゃ可哀想だろ? それに、それが本当の理由じゃないだろ?」
「っ……」
浩二の言う通りだ……いつの間か、優香を言い訳にしてる。
もちろん、優香のお世話は大変なことはあるけど、楽しいし幸せな時間だ。
勉強だって、俺の要領が悪いだけで言い訳に過ぎない。
「……ちょっと、場所を変えるか」
「えっ?」
「ほら、食ったし行こうぜ」
店を出て、人気のない公園に連れていかれる。
「さて、流石にあんなところじゃ聞きづらかったが……」
「な、なに?」
「あれだろ、綾崎に惹かれてだろ? でも、びびってんだろ?」
「び、びびってる?」
「おっと、惹かれてることは否定しないと……」
「……あっ」
そ、そうだった!
まずはそこを否定……無意識に出来なかったってことか。
「妹とか、勉強とかわかるけどよ……別に付き合えると決まったわけじゃないんだぜ?」
「わ、わかってるよ!」
「クク、なら良いけど。俺も含めて、男ってのは勘違いする生き物だからなぁ。ちょっと優しくされたら『あれ? 俺のこと好きなんじゃ?』『この子、俺にだけ優しくない?』とか」
「ぐっ……」
流石モテ男……何一つ否定できないや。
確かに、何処かでそんなことを思っていたような気がする。
まだ何も始まってないのに……はぁ、情けない。
「だから、そんなのは付き合ってから悩めよ。とりあえず友達のまま遊べば良いじゃんか。無理に離れようとすることないぜ」
「……でも、悶々として寝れなかったりしたら……」
「そしたら、俺が話を聞いてやんよ」
「ても、勉強とか、お迎えがあるのは事実で……」
「勉強なら俺が教えるし、何ならお迎えだって週に一回くらいなら代わるぜ?」
ど、どんどん逃げ道が塞がれていく……。
「ほらな、びびってんだよ……これ以上仲良くなって傷つくのを。その前に離れようってな」
「……相変わらずよく見てるなぁ」
「まあ、親友だし。俺がお節介焼くなんざ、お前くらいだよ」
「……ありがとう、浩二。うん、少し動いてみるよ」
「おう、もし振られたらカラオケでも行こうぜ。あと、学校でも困ったら言えよな」
「はは……まずは自分の気持ちを確かめないとね」
「まあ、その辺りは経験していかないわかんないしな」
きっとここで『何でそこまでするの』って聞くのは、野暮なんだよね。
それくらいは俺でもわかる。
でも、ここまでお節介してもらったんだ。
少し……踏み出してみようかな?
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