第32話 女子会?

 ……何話せば良いんだろ?


 一緒に帰ると決めたのは良い。


 嫌な子じゃないし、きちんと目を見て話してくれるし。


 今までこういった子達は、私に近づいて来なかった。


 来るとしても派手な格好した人や、私自身を見ていない人たちとかだけ。


 だから、嬉しいはずなんだけど……さっきからずっとモヤモヤしてる。






「あ、あのぅ……」


「ん、どうしたの?」


「もしかして……機嫌悪いですか?」


「どうして?」


「い、いえ、そう思った……ごめんなさい!」


「なんで謝るの? 私、怒ってる顔してる?」


 いつも、そう……私って怒ってるとか、機嫌悪いとか言われる。


「か、鏡とかは……?」


「ん、持ってない」


「わぁ、本当の美人さんはいらないんだぁ……これ、よかったら……」


 彼女から鏡を受け取り……驚く。


「……眉間にシワが寄ってる?」


「だ、だから、機嫌悪いのかなって……」


「ん、理解した。ごめんなさい、私が悪かった」


「い、いえ! もしかして、私と帰るの嫌でしたか?」


「ん、そんなことない」


 誘ってもらえたのは嬉しかったはず。

 では、何でモヤモヤしたり、機嫌悪そうな顔してるのだろう?


「……伊藤君がいないからですか?」


「……どういうこと?」


「ち、違ってたらごめんなさい。その……寂しいのかなぁって。最近仲良くて、ずっと一緒に登下校してたから……」


「……そうなの?」


「ふえっ!? そ、それは本人にしかわからないんじゃないかなぁ」


「むぅ……困った」


「えっと、どういう風に感じてますか?」


 和馬君がいないことを考えてみる……モヤっとする。

 あと……気のせいかもしれないけど。


「萩原さんと和馬君が仲良くしてるともやっとした。多分、仲間はずれにされた気分だったのかも」


「そ、それってつまり……えっ? やっぱりそうなの?」


「ん、どういうことなのか教えてほしい」


「い、いえ、わたしもあまり経験なくて……あっ! ラインでしたね! まずはそれをやっちゃいましょうか」


「ん、確かに。本題を忘れるところだった」


 その後、ラインの設定というのをしてもらうと……。


 そのタイミングで電話が鳴る。


「ん……電話? 私に……和馬君?」


「で、出ないんですか?」


「出て良いの?」


「も、もちろんですよ! あっちからかけてきたんですから」


 ……何を躊躇ってるのだろう?

 自分の気持ちもわからないままに、ひとまず通話ボタンを押してみる。


『あっ——も、もしもし? 綾崎さん?』


「………」


『あ、あれ? おかしいな……電波悪いかなぁ』


「ほ、ほら、答えないとですよ」


「ん、わかった……もしもし」


『あっ、聞こえてて良かったです。あのですね、ライン設定はできましたか?』


 ……何だろ、落ち着く。

 ゆっくりと丁寧な言葉だから?


「ん、できた。萩原さんがやってくれた」


『では、きちんとお礼しないとですね。その、お友達ですし』


「ん、確かに……電話はそれだけ?」


『い、いえ……明日って予定あったりしますか?』


「特にない。買い物しに、スーパーに行くくらい」


『そうですか……もし良かったら、何処かにお出かけしませんか?』


「………へっ?」


「あ、綾崎さん! あ、危なかったぁ…」


 思わず、スマホを落としてしまった。

 それを萩原さんが上手く拾ってくれたみたい。


『だ、大丈夫!?』


「ん、問題ない。優香ちゃんもいるの?」


『……その、俺と二人だと嫌かな?』


「……その意味は何?」


『お互いのことを知ろうかなって。だって、綾崎さんばかり俺を観察してたらずるいよ』


「それは言えてるかも。わかった、じゃあ明日……どこに行けば良い?」


『俺がそっちの最寄り駅に行くね。時間は二時くらいで平気?』


「ん、平気」


「そ、そっか……じゃ、じゃあ、明日!』


 そこで電話が切れた。


「綾崎さん、良かったですね?」


「どういうこと?」


「その……もう一回鏡を見てください」


 言われた通りに見てみると……そこには見たことない顔で微笑んでいる自分がいた。


 

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