第28話 友達?

 三人で屋上に向かう。


 よしよし、これで噂も平気でしょ。


 お人好しと言われる俺にだって打算はある。


 二人きりだから色々と言われちゃうんだ。


 三人だったら、女子会に参加した男子って感じで……いけるかな?





 屋上に向かい……早速後悔する。


「い、いえいえ! お二人で座ってください!」

「いやいや! 綾崎さんと萩原さんが座ってよ!」


 もちろん、萩原さんは教室で食べるつもりだった。

 なので、床に敷く物なんか持ってない。

 そして……綾崎さんの敷物の上に三人は厳しい。


「ん、問題ない。三人詰めれば平気。和馬君、真ん中に座って」

「ふえっ!? わ、わたし……」

「わ、わかった! 俺が右端! 綾崎さんが真ん中ね!」

「ん、仕方ない。おかしい……こういうシチュエーションが書いてあったのに」


 勘弁してくれ! 女子に挟まれての真ん中とか!

 そりゃ……貸したライトノベルにそういうのあったけど!




 俺が端っこに寄ることで、なんとか三人で座り……。


「ん、今日のお弁当」

「あ、ありがとう。じゃあ、これ……」

「いらない。私が好きでやってることだから」


 うーん、困った。

 普段パンを買うお金を渡したいんだけど……。

 かといって、正直……このお弁当を無しにすることも、ただで食べるのも気がひける。


「えっと、お二人はお付き合いをしてるんですか?」

「ん、してない」

「してないよ!」


 ……何を俺は、即答されたことに凹んでるんだよ。

 自分で友達だって言ったじゃないか。


「そ、そうなんですね。でもお弁当を作ったり、一緒に登下校したり……」

「ん、それには理由がある。彼の生態に興味がある」

「せ、生態ですか?」

「彼は人が良すぎる。その行動は不合理で非効率。私は、その行動原理が知りたい」


 そこで、萩原さんの視線が俺に向けられ……。


「な、なるほど……伊藤君、大変そうですね」

「わかってくれるかい、萩原さん」

「ん、早く食べよう」


 よくわからないけど、少し萩原さんと仲良くなれた気がする。




 話題は、萩原さんの話に変わり……。


「私、お昼一人だったんで……正直言って嬉しかったです。伊藤君も優しいですし、綾崎さんも……その、あの、少し変わってますけど……」

「ん、大丈夫」

「はは……変な人でいいと思うよ」

「君にだけは言われたくない」


 俺と綾崎さんが睨み合う。


「クスクス……仲良しさんですね」

「ん、友達……萩原さんも友達?」

「えっ? い、いいんですか?」


 よし! 行け! 綾崎さん!


「……ん、問題ない」

「多分、よろしくって意味だと思う」

「……はい、よろしくお願いします……あっ!早く食べないと!」

「そ、そうだった!」

「ん、それは間違いない」


 とりあえず、急いで弁当を食べるのだった。


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