第27話 変化?

 学校に着いたけど……誰も話しかけてはこない。


 もちろん、視線は感じるけど。


 一安心……していいのかな?




 ひとまず、席に着いて……。


「おはよう、萩原さん」

「お、おはよう、伊藤君」


 ……ん? 何か視線を感じるぞ?

 振り返ってみると……綾崎さんが見ていた。


「どうしたの?」

「ん……おはよう」

「いや、俺は朝に挨拶……」


 そう言おうとして……やめる。


「萩原さん、綾崎さんがおはようってさ」

「へっ!? わ、わたしにですか?」

「ん、おはよう」

「お、おはようございます……」

「今日はいい天気」

「そ、そうですね」


 それで満足したのか、再び読書に戻る。

 相変わらず、何というマイペースぶり。


「え、えっと……」

「はは……気にしなくていいよ」

「う、うん」


 もしかして……友達になりたいとか?


 萩原さんなら問題なさそうだけど……手伝える事あるかな?






 ホームルームが始まり……。


「やったぜ! 明日からゴールデンウィークだぜ! ガキの相手をしなくてすむぜ!」

「先生! 本音出すぎっすよ!」

「うるせー! こちとら毎日毎日学校に残って……クゥー! 部活が盛んな学校じゃなくてよかったぜ!」

「まあ、それにはさんせー。これで、遊べるし」


 学校の先生っていうのは大変な職業らしい。

 生徒が帰った後も仕事があるし、部活顧問なら無給で休日出勤するようなものだって。

 うちの学校は部活に力入れてない。

 というより、俺が選んだ理由でもある。

 とてもじゃないけど、部活なんかやってる余裕ないし。


「まあ……部活やるやつや、勉強するやつを否定するわけじゃないがな。ただ、たった一度の高校生活だ。それ以外にもバイトや遊び、恋愛とかもしておけよ。でないと、ろくな大人にならん」

「中野先生、含蓄がこもってる?」

「まあなー。部活で培った上下関係を、大人になっても出してくるやつとか……まあ、凝り固まった価値観は良くないってことだ」


 バイトかぁ……何かしてみたいけど、中間試験が近いし。

 やるとしたら夏休み……いやいや、高二の夏は大事だっていうし。

 恋愛……いやいや! そんな場合か!

 でも……ろくな大人にならないか。





 その日のお昼休み……背中を突かれる。


「ん、いこう」

「わ、わかったから。背中を突くのはやめようか?」

「……それは困る」

「いや、困ってるの俺だからね?」

「クスクス……」

「「へっ?」」


 振り返ると……萩原さんが笑っていた。


「ご、ごめんなさい」

「ん、問題ない。何かおかしかった?」

「いや、何もかもおかしかったからね?」

「ふふ……二人って面白い人なんですね」

「初めて言われた」

「いや、俺も言ったよ?」


 うーん……これは言ってみるか?

 萩原さんも、いつも一人でお弁当食べてるし。


「よかったら、一緒に食べる?」

「えっ!? い、いいんですか?」

「……ん、問題ない」


 よしよし、これで友達になれれば良いよね。

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