第16話 ジレ

 そして、そのままホームルームが続く。


「さて、席替えできたな。まあ、所々突っ込みたいところはあるが……まあ、いいか。特に問題はなさそうだし」


 先生が、いつものように適当なこと言う。


「せんせー! 俺の周りがうるさいっす!」

「浩二が一番うるさいし!」

「お前がいうなし!」


 浩二が野次を飛ばし、周りが突っ込む。


「クスクス……浩二君ってば」

「この席でよかったねー」

「ウンウン、楽しくなりそう」


 女子たちも、それを眺めて満足そうだ。


 良かった……席変えてもらって。


 俺があの席だったら、みんなの気分を害しちゃうところだった。


『なんで伊藤なんだよ』って言われるより、そっちのが辛いし。






 その後、昼休みを迎えると……。


「ん……」


「あのぅ……背中を突かないでくれるかな?」


「ダメ?」


「いや、ダメじゃないけど……」


 その、みんなの視線が痛いので……。


「なら問題ない。さあ、行こう」


「えっと? 俺はまたパンを買いに行くけど……」


「今日はいらない」


「お、俺に昼ご飯を食べさせないつもり?」


 それはどんな罰ゲームですかね?


「……むぅ……」


「とりあえず、パンを買いに行かないと……」


 すると、無言で俺の手を掴む。


「ちょっと!?」


「ん、こっち」


 またこのパターン!? 誰か説明をしてください!






 結局、購買に行けぬまま……。


 屋上へと連れ出される。


「あ、あのさ」


「とりあえず、ここに座る。大丈夫、今日は大きいの持ってきたから」


 敷かれた布は、確かに三人くらいは座れそうだった。

 これで、一つの懸念材料が減った……いや、残念になんか思ってないから。


「は、はい」


「ん、それでいい」


「それで、どうしたの?」


「……お……とう……作っ……てきた」


「えっ? なんて? ごめん、よく聞こえなくて……」


「……なんで上手く言えないの?」


「えっと……」


 なんだろ? 何か伝えたいのかな?


 彼女の手元をよく見てみると……少し震えている。


 そして、布に包まれたモノが大きい気がする。


 まさかなぁ……いや、でもなぁ……いや、そんなわけない……でも。


「もしかして……お弁当作ってきたとか……ごめん! そんなわけないよね!」


「ん……作ってきた」


「……へっ?」


「た、食べたくない?」


「いや! そんなことないよ!」


「そう……じゃあ、食べて」


 おずおずと、両手から弁当箱を渡される。


「あ、ありがとう……でも、なんで?」


「パン、健康に悪い。たまになら良いけど」


「な、なるほど?」


 全然理由になってない!


 ほんと、振り回されてばっかりだ……悪い気はしないけど。


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