第11話 モブ、絡まれる
その後、まだ少しだけ時間があったので……。
「あのさ……どうして、昼休みに誘ったのか聞いても?」
「質問の意図がわからない」
「 ……その、休み時間には話しかけてこなかったよね? だから、なんでこのタイミングなのかなって」
「話しかけて欲しかったの?」
「はい?」
えっ? 俺ってそうなの?
……いやいや! 単純に疑問に思っただけだよ!
「面白い顔」
「ひどい……ほっといてよ」
「ふふ……だって、10分しかないから。それじゃ、話したいことも話せないわ」
「な、なるほど」
うわぁ……美人の微笑みってすごいや。
こう、心臓が掴まれる感じがする。
「そんなの非効率だし、だったらまとまった時間の方が効率良いから」
「……それ、良く言う」
「あっ」
俺の言葉を遮って、彼女が立ち上がる。
「授業始まっちゃう」
「あっ、ほんとだ」
「ん、戻ろう」
「……そうだね」
どうやら、一緒に戻ることは決定らしい。
はぁ……ほんと、どうしたもんか。
悲しいことに……握られた手が振りほどけない。
ギリギリで教室に入ったので、誰からも突っ込まれることなく……。
無事に、放課後を迎える。
けど……流石に、そう上手くはいかないみたいだ。
というより、自分の鈍臭さが嫌になる。
「なあ!」
「どうなってんだよ!」
「どこで仲良くなったんだ!?」
帰ろうとしたら、クラスの男子達に引き止められてしまった。
綾崎さんは、ホームルームが終わった瞬間、風のように帰っていったし。
ほんと……自分が与える影響を考えて欲しいよね。
「ま、待って!」
「何だよ、たまには良いだろ?」
「お前、いつも帰っちまうじゃんか」
「女の子とは遊べても、男とは遊べないってか!」
「見た目と違って、実はチャラいとか?」
『はははっ!』
いわゆるリア充と呼ばれる人達に囲まれると……正直、居心地悪い。
こういう空気は苦手だ。
彼らは楽しいのかもしれないけど……。
そういうのが嫌だって人も……人の気持ちになって考えて欲しい。
別に、彼らだって悪気があるわけじゃないと思うけどさ……多分。
すると……俺の視線に、浩二が入ってくる。
「へいへい、その辺にしとけって」
「んだよ、浩二」
「邪魔すんなよ」
「これから連れて行くんだからよ。そうだ、お前仲良いんだから、こいつ説得しろよ」
……早くいかないと、優香のお迎えが。
「そいつ、俺が約束してんだわ。と言うわけで、悪いが持っていくぜ」
「あん?」
「なら、俺らがいても……」
「お、おい!」
ごちゃごちゃ言う三人を無視して、浩二が俺の手を引く。
……なんか、今日はこんなんばっかりだなぁ。
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