第68話 テスト終わりの放課後

……どうしよう?


綾崎さんは、何やら下を向いているし……。


さっきから並んで歩いているけど、何を話せば良いんだろ?


いつも、割と綾崎さんの方から色々と聞いてきて……。


いやいや! 何を他人任せにしてるんだ! ここは、頑張らないと!


「そ、そういえば!」


「っ……び、びっくりした」


「ご、ごめん」


ァァァ! 緊張して声が出てしまった!


「ん、大丈夫……ふふ」


と、とりあえず笑ってくれたからいいかな?


「き、今日でテストも終わりだね」


「ん、今回は頑張った」


「そうなの? 割と、いつも成績いいけど」


「……だって、ここで成績を落としたらバイトもできない。それに、和馬君達のせいにされちゃうから。そしたら、両親に怒られる」


……そっか、だから最近はあまりうちにも来なかったんだ。


綾崎さんの両親は子供を放ってるくせに、そういうことに関しては厳しいって言ってた。


なのに、俺は自分のことばかり考えて……避けられているのかなって。


何か、ものすごく恥ずかしい奴だ。


「そういうことだったんだね」


「……それだけじゃないけど……カズマ君に会うのが……」


「へっ? ごめん、声が小さくて聞こえなかったんだけど……」


「な、なんでもない」


「そ、そう? えっと……じゃあ、これからは遊べるのかな?」


「ん、ばっちし。優香ちゃんに会いにいく」


「はは……うん、いつでも良いからね」


ひとまず、今は優香に会いにくるで良いか。


そのうち、俺に会いに来てくれるようにがんばろっと。







その後、何とか最後のテストを終える。


しかも、そこそこの出来だったので一安心だ。


「お、終わったぁぁ……!」


「ふふ、お疲れ様でした」


「ん、お疲れ」


隣に座る萩原さんと、後ろに座る綾崎さんから声をかけられる。


というか、一番端の前の席だから、周りに女子しかいない。


まあ、友達も少ないから良いんだけど。


「二人もお疲れ様。最後のテストだけど、綾崎さんはともかく、萩原さんはどうだった?」


「そうですね……前より成績は上がったかなって。これも、綾崎さんのおかげだよー。教室でも勉強とか教えてくれたから」


「なるほど。たしかに、俺も成績上がったかも」


「むぅ……」


「……綾崎さん? なんで膨れてるの?」


膨れてる姿はギャップがあって、とても可愛いけど……理由がわからない。


「ともかくって言った」


「……はい?」


「い、伊藤君、綾崎さんは、どうして自分には聞かないのってことだと思う」


「へっ? ……えっと、綾崎さんは最後のテストどうだったかな?」


「ん、出来た」


その顔は、とても満足げに見える。


どうやら、正解だったらしい。


ほんと、女の子ってわからない。




その日の放課後は、綾崎さんも萩原さんと出かけるみたいなので……。


俺も、予定通りに浩二と一緒に帰ることにする。


その帰り道の話し合いの結果、マックに入り、適当にダラダラ過ごすことにした。


「んで、どんな感じよ?」


「うーん……一応、俺なりに頑張ってるだけど」


「そうだな。話に聞く限り、遊園地に行ったり、水族館に行ったり、勉強会をしたり、プレゼントをしたり……まあ、良いと思うぜ。それに、あっちも悪く思ってないだろうし」


「そ、そうかな? 少し、避けられてた気がしたから。まあ、それは杞憂だったんだけど……なんか、変っていうか」


「まあ、そりゃそうだろうな」


「えっ? どういうこと?」


「それは自分で考えろよ。とりあえず、夏の予定をどうするかだ」


「夏の予定……」


「イベントは山ほどあるだろ? プールや花火、浴衣を着て屋台とかもいいしな。そういうのにか誘ったらどうだ?」


「確かに……」


「見たいだろ? 綾崎の水着姿とか」


「そ、それは……まあ」


見たくないと言ったら嘘になってしまう。


それこそ、浴衣とか似合いそうだし。


「んじゃ、決まりだ。今から連絡しろ。こういうのは、早めに言わないといけない。綾崎の予定もあるだろうし、バイトとか萩原と遊ぶとか。何より、女の子には準備に時間がかかる。それこそ、水着を買ったり、浴衣をレンタルしたりな」


「おおっ……! 浩二、ありがとう!」


次々と出てくる情報に、俺は感心しっぱなしである。


さすがは、モテる男は違う……じゃなくて、そうだからモテるってことか。


「なに、良いってことよ。お前と、こういう話をすんのも悪くないしな」


「まあ、確かにしたことないもんね」


「おまえってば、真面目だからなぁ……まあ、だからこそ友達やってんだけど」


「……ありがとね、浩二。俺と、友達になってくれて」


「おいおい、照れるからよせって」


すると、浩二が照れ臭いのか……外を眺める。


俺はそれを見ないふりして、早速綾崎さんに連絡を送るのだった。

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