第8話 登校

保母さんにからかわれつつも、優香を無事に保育園に送り届け……。


学校へ向かい、綾崎さんと一緒に歩いていくが……。


俺の足りない頭は、大混乱に陥っていた。


学校までの距離はそこまでないし、ちんたらしてると誰かに見られるよね?


そもそも、明日も来るって?


いやいや、えっと……まず聞くことはなんだ?


「あのさ……どうして来たのか聞いても良いかな?」


「昨日言った、 貴方に興味があるって」


「でも、理由は言ったよね?」


「納得いかない。だから、わかるまで観察する」


「ええぇ……つまり、だから朝に訪ねて来たの?」


「そう、それもある……けど、まずは謝ろうと思って。あと、お礼がしたい」


「ん? ……何かあったっけ?」


思い返してみるけど……特に思い当たらない。


「ん……本当に無自覚」


「はは……」


「君は私の話を、忙しいのに嫌な顔しないで聞いてくれた。妹さんのお迎えがあったのに」


「あっ、昨日の話か……ん? どうして、妹の迎えがあることを……」


「ん、後をつけた」


「……はい?」


「昨日、あの後追いかけた」


……待て待て、どういうこと?

この学校一の美女が、俺の後をつけてた……?

この、どこにでもいるようなモブ高生を……自分で言って悲しくなってきた。


「そ、そうなんだ。それはわかったけど……お礼?」


「私が休んだ時、貴方が代わりにお花に水をあげたって先生が言ってたから」


……ああ、あれか。確か、先週だっけ?

いつも花に水をあげてることは知ってたから、少し気になったんだっけ。


「別に大したことしてないよ」


「そんなことない。私にとっては大事なこと。だから、お礼を言いにきた」


「うーん……わかったよ。じゃあ、受け取ることにするね」


「ん……でも、その行動原理がわからない」


「……特には考えてないかなぁ。あえて言えば、お花が可哀想かなって。あと、綾崎さんが一生懸命にやってたから気になって」


「……変な人。だったら、言えば良いのに」


「別に恩に着せたいわけじゃなかったから。ただ、自分がしたかっただけだよ」


「ますますわからない……私にはわからない……」


……そんなに考え込むことかなぁ。

俺は自分でしたいことをしてるだけだし。





結局解決しないまま……学生達と合流する。


「お、おい……」

「まじ?」

「うそー、あんな地味なので良いの?」

「もったいないねー」


……あぁ、俺の地味な学生生活が終わった。

これから、質問ぜめとかされるんだ……憂鬱。

でも、突っぱねることもできないしなぁ。

そりゃ、俺も男だし……少し嬉しい部分は否定出来ないから。


「どうしたの?」


「いや……気にならないの?」


「別に、慣れてるから」


「俺は慣れてないから!」


「大丈夫、すぐに慣れる。人は慣れる生き物。なので、明日からもよろしく」


「いや、慣れないからね? 明日もくるの? 誤魔化されないからね?」


「むぅ……なるほど、意外と強情な部分もあると」


「あの……何をメモしてるのかな?」


「生態系。どのような人かを確認するため。だから、明日も迎えに行く」


「……もう、好きにして」


「ん、そうする」


前略おふくろ様……帰ったら話すことが多そうです。


どうやら、明日からもうちに来るみたいです。




教室に入り、自分の席に着くと……。


親友であるイケメン、もとい佐々木浩二が話しかけてくる。


下品でない程度に、少し茶髪に染めたサラサラの髪。


身長も175と丁度良く、細身のマッチョでスポーツマン。


人当たりも良く、まさしくハイスペックリア充モンスターだ。


俺は中学の頃から気に入られ、何故かよくつるんでいる。


「おいおい、どういうこって?」


「どうもこうもないよ。なんか、興味を持たれたというか……好きとか告られたとかじゃないことは言っておく」


「なるほど。確かに、そんな感じには見えないな。おっけー、あとはまかしとけ」


俺が何も言わずとも、浩二が男子達と話をしに行く。


きっと、このままだと質問責めにされる俺を助けるために、自分から率先してみんなが気にしてることを聞きに来たんだろう。


正直言って助かった。


どちらかというと、俺はクラスでは浮いてるし……幸い、いじめとかはないけど。


部活も入ってないし、集まりにも参加したりしないから。


それよりも……はぁ〜明日からどうしよう?

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