第6話 突撃
……理由はないのね。
「でも、理由がないのにやるの? ……ますます、訳がわからない」
人の行動原理として間違ってる。
人は理由なしに良いことはしない。
「うーん……気になる」
やっぱり、もうちょっと話してみたい。
今から追いかければ、間に合うかな?
どうせ、家に帰ってもすることないし。
「よし……行ってみよう」
何となく気になった私は、彼の後をつけてみた。
幸い、彼の足は速くないので、私でもついていくことができた。
「ここは……保育園?」
すると、彼が小さい女の子と出てくるのが見えた。
咄嗟に隠れた私は、その様子を観察する。
「……妹さんがいたのね……高校生がお迎え? お母さんやお父さんは?」
あの子も、私みたいに可愛がられてない?
でも、お兄ちゃんがいるなら良いよね。
「なるほど……だから急いでたのね」
それは悪いことしちゃった。
随分と一生懸命に走ってたし、ギリギリだったのかも。
「それなのに、私の話を聞いてくれて……本当にお人好しなのね」
損得勘定なく、優しいってこと?
そんな人、いるのかしら?
それじゃあ、損ばかりしちゃうわ。
「とりあえず……しばらく観察してみよう」
そうすれば、もっと彼のことがわかるはず。
まずは……何からしよう?
そうだ……そうしてみよっと。
◇
……眠い。
「ふぁ……起きなきゃ」
帰ってからラインの通知が凄かったし……。
どうなった!? 告白か!?とか。
「とりあえず、みんなには何でもないって説明したけど……」
それに昨日、遅くまで勉強してたからなぁ。
頭も良くなく、要領の悪い俺は、勉強時間に比べて成績が良くない。
こんなんじゃダメだってわかってる。
でも優香の世話もあるし、自分の時間だって……。
「いやいや……自分の要領が悪いことを、優香の所為にしちゃダメだよな」
すると……トタトタトタと足音が聞こえてくる。
「お兄ちゃん! おはよー!」
「おはよう、優香」
そうだ、親父と約束したんだ。
俺に代わって、家族を守ってくれって。
そして、人に誇れる自分であれって。
朝ご飯を食べ終わると……。
ピンポンの音がする。
「あら、誰かしら?」
「うちのゴミ出しが散らかったとか?」
たまにカラスにやられて、ごみネットが散らかることがある。
そうすると、ご近所さんに迷惑がかかる。
「だったら大変だわ!」
「良いよ、俺が行くから。母さんは出かける準備して」
母さんに代わって、玄関のドアを開けると……。
「あの、何かあり……はれ?」
「おはようございます」
「お、おはようございます……?」
そこには、綾崎さんが立っていた……。
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