第39話 ヒロイン視点
……楽しかった。
いつもなら、家に入ったら暗い気持ちなのに……。
今日はそんなことない。
本を選ぶのも楽しかったし、二人で本を読むのも楽しかった。
「これは新しい発見。本は一人で読むだけじゃない」
あと、ゲームセンターも楽しかった。
「クス……和馬君、負けたら変な顔してた」
でも、嫌な顔はしてなかった。
「何とか、ラインも聞くことできた」
何でかわからないけど、全然聞けなくて……あれは何だったんだろう?
「あと……最後だけど褒めてくれた」
鏡の前の私は、笑っている気がする。
笑い方なんて忘れたと思ってた。
私は洗面所の前で、今日の朝のことを思い出す……。
◇
……何してるんだろう、私。
昨日は全然寝れないし、今日も服が決まらない。
「……こんな感覚はいつ以来?」
確か、昔はあった気がする。
小さい頃に、両親が遊園地に連れて行ってくれた時とか。
そんな日は、こんな感じで……楽しみだった気がする。
「そっか……私、今日が楽しみなんだ」
確かに、和馬君と会うのは嫌じゃない。
彼は人の悪口を言わないし、色々と気を使ってくれる。
一緒にいて、心地が良い。
「今日は私を観察するって言ってた……ますます、なに着よう?」
洋服なんかに興味はない。
恥ずかしくない程度に着れれば良いって思ってた。
「……ワンピースがあった」
高校生になるときに、久々に三人で出かけた。
その時に、珍しく両親が買ってくれた。
高校祝いのお祝いだって……二人とも珍しく機嫌が良くて……。
でも、今まで着たことはない。
何故なら……あの日に離婚が決まり、数日後あの二人は居なくなったから。
お祝い……二人にとっては義務教育を終えたいうお祝い。
これで、新しい家族のところに行けるということを知った。
「……でも、服に罪はない。これは、確かに自分が気に入って選んだもの」
何となく手に取り、鏡の前に立ってみる。
少しサイズ変わったけど大丈夫かな?
「似合ってる? ……わからない」
試しに写真を撮って、萩原さんに送ってみると……。
『可愛い! 凄く似合ってるね!』
『ほんと? 変じゃない?』
『うん!』
『ありがとう。じゃあ、これにしてみる』
『頑張ってね!』
『ん、やってみる』
……すごい、すぐに返事がきた。
友達ってすごい……これも、和馬君のおかげ。
「……何か言ってくれるかな?」
◇
……ちょっと遅かったけど。
「でも、良い……これで嫌な思い出の品じゃなくなる」
これは、初めての友達とお出かけ記念の物。
これからは、これを見たら笑顔になれるかもしれない。
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