第45話 彼女の話

 ……ど、どうしよう?


 こんな時、なんて声をかけてあげればいいんだ?


 ひとまず言えることは……黙ってるのは良くない。


「か、可愛いと思……います」


「……えっ?」


「いや、その……綾崎さんは可愛いと思う」


「…………」


「あっ——そ、そういう意味で言ったんじゃないですよね!?」


 俺は何言ってんだ!? 今を可愛いと言ってどうする!?

 彼女は小さい頃の話をしてたっていうのに!

 綾崎さん、目を丸くして止まっちゃってるじゃん!


「………私、可愛い?」


「へっ?」


「君から見て可愛いの? 私、美人とは言われる。でも、可愛いとは言われたことない。愛想も良くないし、無表情だし……可愛げがないって言われてきた」


「そ、そうですね……か、可愛いかと思います」


 ァァァァ! 顔から火が出そう!

 ……でも、きっとこれは伝えないといけないことだ。

 詳しい理由はわからないけど、そんな気がする。


「ん……どの辺?」


「え、えっと……まだ会ったばかりなんであれですけど……ふと笑う仕草とか、優香を見る目とか、意外とお茶目なところとか……」


「……そうなんだ……私といて楽しい?」


「う、うん、もちろん。というか、楽しくなかったら誘ってないよ」


「……ん、ありがとう……また誘ってくれたら嬉しい」


 そう言い、仄かに微笑む。


 ……ほら、やっぱり可愛いじゃんか。






 その後、ただ静かに時を過ごす……。


 持ってきた本を読んだり、優香を眺めたり……。


「そういえば、貰った本面白かった」


「あっ、俺も面白かったよ」


「ちゃんとライトノベル?っていう分野でも、情景描写とか心情の描写とかあるんだと思ってびっくりした」


「あぁ……まあ、そういう偏見はあるかもね。俺も推理モノって淡々としててつまらないかとお思ってだけど、ちょっとしたコメディとかが緩急になって面白かったよ」


「ん、私も読んでみる……他にも君が読んでる本とか」


「えっと、漫画とか?」


「ん、そういうものも。萩原さんとかともお話ししてみたい」


「なるほどね。うん、良いよ。時間があるなら、ゴールデンウィーク中でも良いし」


「時間ならある……私、一人暮らししてるから。友達も……今まではいなかったし」


「……えっ?」


「……一年前に両親が離婚して、今はあのマンションで一人で住んでる……ごめんなさい、つまらない話で」


「い、いや……その……俺でよければ聞くよ……多分、なんの力にもなれないけど」


 一瞬だけ泣きそうな表情を見せて……綾崎さんがポツポツと語り出す……。



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