第77話 決意

ひとしきりウォータースライダーを楽しんだら……。


「それじゃあ、流れるプールに行く?」


「ん、そうする」


二人で流れるプールに入り、ゆったりと過ごす。

これも、人が少ないからできることだ。


「ん、ここは良い」


「ん? どうしたの?」


「子供が多いから、私達くらいの年齢の人が少ない」


「うん、そうだね。綾崎さんは子供好きそうだし……その、あんまり同世代がいない方が良かったかなって」


周りを見渡してみれば、小学生くらいの子達ばかりだ。

あとはお母さんとか、お父さんとか。

少し騒がしいけど、ここを選んで良かった。


「ん……ありがとう。正直言って、水着になるのは抵抗あった」


「はは……そりゃ、そうだよね」


今だって、数少ない若い男性が、綾崎さんのことを見てるし。


「でも、このくらいなら平気……和馬君いるから」


「へっ?」


「一緒にいると、安心する」


「そ、そう? それならいいけど」


「ふふ、ありがとう……今日はとっても楽しい」


そう言って微笑むので、俺は水の中に潜る。


ブクブクブク〜!可愛いよォォォ!


思わず、心の声を出してしまう。


でも、とてもじゃないが耐えられそうになかった。






その後再び、二十五メートルプールで競争したり……。


もう一回、ウォータースライダーに乗ったりする。


そして、四時を過ぎたので帰ることにする。


「それじゃあ、また後で」


「ん、私の方が時間かかる」


「大丈夫だよ、のんびり待ってるから」


「ありがとう」


そこで分かれ、俺は更衣室に入る。


男の俺は特に時間がかかることもないので、ささっと身体を拭く。


そして、ドライヤーで髪を乾かしながら、今日のことを思い返す。


「……可愛かったなぁ」


もちろん、予想以上のスタイルで、ドキドキしたけど……。

それ以上に、はしゃいでる感じが可愛かった。

それに綾崎さんが笑うと……なんだが、嬉しくなる。

やっぱり、好きってことなんだと思う。

あの笑顔が、また見たいなって強く思うから。


「……告白かぁ」


多分、嫌われてはいないと思う。

いや、自意識過剰じゃなければ……好かれているとは思う。

ただ、相手は綾崎さんだしなぁ。

そういう好きとかって感じが、いまいちわかってなさそう。


「……そもそも、伝えないと気付いてもらえない?」


……だったら、まずは告白した方がいいかな?

そうした方が、意識してもらえそうだし。

ただ、俺に言えるかだけが問題だ。


「言うとしたら……いつだろう?」


髪をガシガシと乾かしながら、思案する。


……よし、決めた。


この夏休みの間に告白する。


振られたとしても、綾崎さんが学校で気を遣わせないように。


……俺自身の立ち直りの時間も必要だしね。

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塩対応で有名な綾崎さんがモブの俺に興味津々らしい おとら @MINOKUN

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