第4話 ヒロイン視点
……結局、良く分からなかった。
それに、お礼も言えてないし……私が気になったきっかけも話せなかった。
二年生になってクラス替えをして数日……。
私は憂鬱だった。
また、しばらくの間変な目で見られる日々が始まるから。
男の子からはジロジロ見られるし、女子からは敬遠されるし……。
どうしたの?と聞いても、何も答えてくれないし。
と思えば、いきなり男の子に告白されたり、女子から暴言を吐かれたり……。
どういうこと? 一体、みんなはどうしたいんだろう?
私はついていくのがやっとで、話についていけない。
もっとわかりやすく説明してくれたら良いのに。
面と向かって、はっきりといってくれたら良いのに。
そんなんだから、私は人の気持ちがわからないって良く言われてきた。
でも私からしたら……みんなのがわからない。
もっと効率よく、わかりやすく生きれば良いのに。
そんな居心地の悪さからか、具合が悪くなって学校を休んでしまった。
二日後に学校に行き、私が真っ直ぐ向かったのは……。
お気に入りの、学校にある花壇だった。
「あれ? お花枯れてない……雨降ってないよね?」
私はお花が好きで、ボランティアでやっていた。
もう放置されていて可哀想で、先生に頼んでやらせてもらっていた。
花は私の話を聞いてくれるし、心を安らかにしてくれる。
……どうせ、家に帰っても誰もいないし。
「もしかして、先生がやってくれた?」
そう思い、職員室に行くと……。
「おっ、具合良くなったか?」
「はい。あの、花壇に水って……」
「ああ、あれな。俺がやっても良かったんだが、同じクラスの伊藤って奴がやってくれたよ」
「……誰?」
「ははっ! そう言うなって、同じクラスの男子だ。まあ、良い……そいつが、お前が水をあげてたのを知ってたらしくてな。代わりにやりますって言ってきたんだよ」
「何のためにですか? 何の得があるのでしょうか?」
「さあ? 本人に聞いたらどうだ?」
「……考えておきます」
それだけ言い、私は職員室から出て行く。
「あれかな?」
私の容姿は男の人から見て……そういう対象らしい。
今までも気を引くために、色々とされてきた。
その子も、そういうこと?
でも……自分からあんまり話しかけたことないから緊張する。
それから二日後、忘れ物をしたので教室に戻ると……。
教室を掃除している、一人の男子がいた。
「あれ? あっ、綾崎さん」
「……ん」
そこには同じクラスの……なんとか君がいた。
確か……伊藤君だっけ?
本当に……これといって特徴もなく、普通の男の子だ。
「忘れ物かな?」
「そう」
……どうしよう? 聞いてみる?
……あれ? そもそも、何でいってこないの?
……いつもの感じなら、ここで自分がやりました的なことを言われるんだけど。
「綾崎さんでも、そういうところあるんだね」
「……うん」
会話はそれで終わり、彼は用具の片付けを始めた。
結局、彼が何の為にそんなことをしたのか……分からずじまいだった。
それから、何となく気になって、彼を観察していた。
そんなある日のこと……彼がおばあさんを駅に案内しているのを見た。
「……逆走してる」
あれじゃ、遅刻しちゃうよね。
知り合いなのかな?
だったら、まだわかるけど。
「でも、そんな感じには見えない」
結局、彼は遅刻をした。
でも、その理由は言わなかった。
ただ、先生に注意され、遅刻という扱いになった。
何で言わないの? 言えば、もしかしたら許されるかもしれないのに。
何で友達にも言わないの? 褒められたり、良い奴だと思われるのに。
何だろ……気になる。
こんなに気になったのは初めて……。
見ていると、彼はみんなに気を使ってたり、手伝っていたり、私から見たら非効率だ。
別にみんなが感謝しているようには見えないし……。
そんなことして、何の得があるんだろう?
どんな考えの持ち主で、どんな風に育ったんだろう?
気になった私は、勇気を出して……彼に話しかけることを決めた。
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