縮まる距離
第53話 テストが終わり……
ゴールデンウィークが終わり、三週間が過ぎた。
その間といえば、俺は中間勉強に明け暮れ……。
綾崎さんはというと、何やら色々と慌しそうだった。
お昼ご飯は一緒に食べるけど、いつも眠たそうにしてたし。
かといって、『何かあったの?』と聞いても答えてくれなかった。
俺も余裕がなく、無理には聞き出せずにいた。
そんな中、放課後になると……。
「和馬君、一緒に帰ろ……今日は家に行っても平気?」
「えっ? う、うん、もちろん良いよ」
戸惑う俺を連れ、彼女が先を行く。
「今日はどうしたの?」
「……試験終わったから。最近、いつも以上に真面目に勉強してたから、和馬君の迷惑になるかと思ってた」
「あっ……そうだったんだ。ごめんね、全然気付かなくて」
なんだ、俺のせいだったのか。
確かに余裕がなかったし……結果も微妙かもしれないけど。
なにせ、好きと自覚してしまったわけだし。
正直いって、勉強どころではなかった気も……いや、それを言い訳にしちゃダメだよな。
「ん、仕方ない。それに……私も成績は落とせなかったから」
「そうなの? というか、元々成績いいよね?」
学年でもトップクラスで、毎回一位から五位には入ってる印象だ。
全教科満遍なく高く、バランスが良い感じだった気がする。
「でも……実はバイトをしたくて」
「えっ? ……そうなんだ。その、理由は聞いても良いのかな?」
「私は人のことがわからないから、そういうこともやろうかと思って……勇気がなかったけど、萩原さんがバイトしてるところ紹介してくれるって」
「なるほど、それなら不安は減るね」
「それで一応親に言ったら、成績だけは落とすなって……多分、学校から親に連絡が行くからだと思う」
綾崎さんの心配ではなく、自分たちの心配か……悪くは言いたくないけど、ちょっと腹が立ってくる。
「……そっか……ごめん、気の利いたこと言えなくて」
「ん……そんなことない。和馬君は優しい……ただ聞いてくれるから」
「そ、そうかな?」
「ん……それより、優香ちゃんは元気?」
「そりゃあもう。綾崎さんはいつ来るの!?って大変だよ」
「そうなんだ……嬉しい」
その頬は赤くなり、めちゃくちゃ可愛い。
……まあ、それを引き出してるのは妹なんですけどね。
いつか、自分で出来たらいいけど……。
「きっと今日も喜んでくれるよ」
「和馬君は?」
「へっ?」
「私がくると嬉しい?」
「……嬉しいよ」
「ん……そう」
俺はそれ以上何も言えず、彼女の顔を見ることすらできなかった。
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