第22話 泣かす?
その後、何とかおままごとをこなして……。
気がつけば、もう六時を過ぎていた。
「あっ——こんな時間になってる」
「……ん、確かに。ごめんなさい、長居しちゃって」
「いやいや、こちらのセリフだよ。優香、綾崎さんはもう帰るよ」
「やだっ! まだ遊ぶお!」
し、しまった……子供特有の『イヤイヤ』が出た。
こうなると感情的で、中々いうことを聞かないんだよなぁ。
ただ頭ごなしに叱りつけるのはダメだ……優香にもわかるように説明しないと。
「ダメだよ、優香。遅い時間になったら綾崎さんの家族が心配するでしょ? 例えば……優香が帰って来なかったら、お兄ちゃんはどう思う?」
「うぅ……心配するお」
「そうだね。お兄ちゃん、探し回っちゃうね」
「………ない」
ん……? 何か聞こえた?
綾崎さんの方を見てみると……。
「お姉ちゃん? 泣いてるの?」
「だ、大丈夫!?」
「わ、わたしがわがまま言ったから……?」
「ち、違う……あれ? 何で泣いてるの?」
どうやら本人も自覚がなかったようで……呆然と立ち尽くしている。
そんな中、俺と優香はどうしていいか分からず、オロオロするしかない。
「たたいま〜! あれ? 可愛い息子と娘のお迎えがないわね……知らない靴がある」
「あっ、ママだっ! ママ〜! 大変だお!」
母さんの帰宅に気づき、優香が駆け出していく。
しかし、俺は相変わらず立ち尽くしてしまう。
泣き喚くでもなく、顔を崩すことなく……ただ涙を流す彼女から目が離せない。
「あらあら〜息子が女の子を泣かせてるわ!」
「ち、違うよ! いや! 違くないかもだけど!」
「だ、大丈夫……伊藤君は悪くない」
母の登場により、俺と綾崎さんが起動する。
よ、良かった……このままじゃ、どうしていいかわからなかった。
「……ふむふむ、とりあえずご飯食べてく?」
「食べてくの!?」
「はい?」
「……良いんですか?」
「もちろんよ。ただ、親御さんに……」
「じゃあ、電話してきます」
そう言い、タタタッとリビングから出ていく。
そしてすぐに、玄関が閉まる音がする。
「さて……息子」
「は、はい!」
「女の子を泣かせるような子に育てた覚えはないわよ?」
「ないわお!」
「い、いや、俺は別に……」
何かしたっけ? そんな覚えはないし……。
優香だって、いやとは言ったけどそこまでじゃないと思うし……。
「泣かした原因はわからないわ。ただ、女の子が泣いてるなら抱きしめないと」
「そんなことしないよ!?」
「全く、情けない……でも、泣くってことは何か理由があるのよ。貴方や優香が原因じゃないかもしれないけど、よく考えておきなさい。間違えても、何で泣いたのとかは聞かないこと。それが女性に対するマナーよ」
「……うん、わかった」
……でも、そっか。
俺が泣かしたつもりはないけど……。
もしかしたら、俺の言葉の何かに反応したのかも。
後で、きちんと考えてみないと。
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