概要
――その悪夢を見るまでは。
増幅していく悪夢。そして猜疑と憎悪。
果たして、その夢の正体とは?
あなたのその夢は、本当に大丈夫ですか?
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!無意識に見るはずの夢で操られたらどうしますか?
映は絵に自信があり、美大まで行っていますが、自分の限界に気付かされている女子です。そんな時に出会ったのが、映がとても才能を感じた絵の描き手の幸。
二人は職業は違う道を歩みますが、同棲をします。
映は就職先でもなかなか上手くいかず、とても苦労をします。そのせいでよく眠れなくなり……。
睡眠の本を読んだり、寝具を変えたりと色々しても、睡眠改善派見られず、それどころか悪夢を見るようになってしまう映。
そんな映を幸は心配して、精神科に入院させることに。そこには映と同じような悪夢を見る病人がいて……。
その悪夢の特効薬はなんと!
治ったと思った悪夢。しかし、それが恐ろしい企みによるものだった!
後…続きを読む - ★★★ Excellent!!!操作される夢、そこに描かれた光とは
黒森映は悪夢を見る。自分が喰われていく夢だ。
次第に睡眠をとらなくなった彼女を恋人である幸は病院へ連れていくが……。
物語は個人の人格と精神の問題としてはじまるが、実は他の人間も同じ悪夢を見ていたのだとわかる。
そこから謎が一気に人為的なものへと繋がっていき、最後はひとりの人間へとたどり着く。
端々に散りばめられた要素と驚きの展開、思わずページをめくってしまい止まらなくなりました。
絡んだ糸がキャラが動くたびに少しずつほぐれていく、特上のミステリーと言えます。
ありきたりのハッピーエンドに終わらず、読者にさらに問題を突きつけていく……力強く地に足がついたメッセージ性の強い作品です。 - ★★★ Excellent!!!夢に隠された人の悪意
夢を見ない人はいないと思うのですけど、それは起きて時間の経過とともに忘れていくもの。通常は日常生活に支障をきたすほどのものではありません。人を苦しめ、悩ませる夢があるとしたら、それは『悪夢』です。
美大出身の女性、映は仕事上の悩みから心身に支障をきたし、次第に悪夢を見るようになります。
症状は重く、やがて映を蝕んでいき……
この作品の一番の魅力はオリジナリティに富んでいることだと思います。はじめて読むタイプの作品でした。なのにスッと肌に馴染んで心地いい、恐らく夷也さんだから書けた作品だと思います。
もう一つの魅力はリアルさ、映が病に苦しめられるさま、助けようと奔走する恋人、プライドをかけて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!夢と現実、その境界の間にあるのは闇か光か
悪夢をみたら、その夢を獏に食べてもらう。迷信とはいえ、この獏の存在は神秘的なものだろう。
日常生活が緩やかに崩れていく。黒森映の人生は幸福と不幸の繰り返しで、自身に巣食う闇に気が付かないまま体だけが壊れていく。
そんな彼女を支える天才画家、中島幸。眠れない日が続き、やつれていく映のために安眠を模索する。
そこでたどり着いたのが「面白い!睡眠法!」という一冊の本。藁にもすがる思いで、図書館から借りた本だが、あまり信憑性がない。寝具を変えて、いくつかのリラックス法をためしてもそれでも悪夢は続く。
やがて、精神が壊れた映は精神科に入院することとなる。そこで、浮かび上がる不可解な謎。
果たして、こ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!それはあたかも《獏》の咀嚼のように
最後に夢をみたのはいつですか。それはどんな夢でしたか。
夢というのは不思議なものです。眠っているあいだに現実ではありえないものをみたり聴いたり、時には実感をともなってさも実際に経験しているかのようなきもちになるのですから。
昔から夢については様々な論議がかわされてきました。時に信仰と結びつき、時にそのひとの願望として解釈され、現在では神経生理学によって夢のメカニズムが研究され、徐々にその働きが解明されるようになりました。
夢とは、睡眠時に脳が記憶の整理をしているためにみるのではないか、というのが通説となっています。
ですが、ほんとうのところ、生物が夢をみる理由というものは解明されていませ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人間の心に起こる問題の難しさ、奥深い恐ろしさを描き出す。
恐ろしい怪物に内臓から手足まで食い荒らされ、そのリアルな痛みまでを感じる強烈な悪夢。
地獄のような悪夢が毎晩繰り返される、その原因は——。
何ともどろどろとどす黒いものが不気味に蠢く、ホラーとサスペンスをもじっくりと混ぜ込んだ味わいの重厚な現代ドラマです。
怪物に喰われるという恐ろしい夢に毎晩うなされるようになった主人公、黒森映。
彼女の恋人で才能ある美大院生である中島幸は、彼女の恐怖と苦痛に真摯に寄り添い、その悪夢を何とか解消してやりたいと考える。
幸に連れられ映が受診した精神科の医師・清川は、奇しくも同様の症状を訴えるその他の患者のためにも、この悪夢の原因解明と治療に必死に向き合い始め…続きを読む - ★★★ Excellent!!!この小説は、『読む』のではなく、『読まされる』
うまくレビューを書ける気がしませんが、この作品の素晴らしさ、作者である夷也荊さんの素晴らしさを1人でも多くの人に伝えるために書きたいと思います、とだけ前置きさせてください。
圧倒的な世界観と多様な情報、そして作者の筆力で、この作品は成立していると強く感じます。
誰にも真似できない、独特的な設定とシチュエーションの数々。
物語の最後にある『参考文献』という項目からもわかるように、様々な種類の知識をかなりの数使用。
そして、それらを読者にわかりやすく説明するだけではなく、世界にずるずると読者を引き込む表現力。
素晴らしい技術だと思います。
この作品の題材は、キラキラしたファンタジーや恋愛…続きを読む - ★★★ Excellent!!!夢に隠された現代の闇――――
これは、夢にまつわる物語です。
夢を自分でコントロールできたなら、いい夢ばかり選んで見たいものですが、ここに登場するのは悪夢でした。
その悪夢に取り付かれた患者たち。
患者に寄り添う身内や恋人。
悪夢を取り払おうと必死になる医師。
その悪夢で、本当は世界をいいものにかえたかった人……。
物語の中には、現代社会にある問題がたくさん隠されています。
読み進めながら、その問題とどう向き合って行くべきかを考えさせられるお話でもあります。
とてもしっかりと構想が練られていて、のめり込むように読みました。
元々文章力に優れた作家様なので、商業本と同じような気持ちで読み進められます。
是非、読んで頂きた…続きを読む - ★★★ Excellent!!!社会に潜む心の闇とそれらが生み出した障壁とは?
睡眠中の悪夢を皮切りに事件は始まります。
最初は不遇な美大生の苦悩の日常について描かれますが、それが恐ろしい『悪夢病』に昇華し、精神科病棟に入院するまでになる。
恋人の描いた絵によって病状は回復するが……!?
全体としてややおどろおどろしい雰囲気が取り巻きながら、人の精神の闇に切り込み、後半はさらに恐ろしい展開が待ち受け、終盤は衝撃の真相を突き付けます。
エピローグはぐさりと突き刺さるような、作者様からの強いメッセージを感じ、同時に読者に問題提起されます。
社会派ミステリーとカテゴライズされるでしょうが、扱っているテーマは斬新かつ緻密。
ネタバレになるので詳細はお読み頂きたいのですが…続きを読む