『獏の見る夢』

作者 夷也荊

人間の心に起こる問題の難しさ、奥深い恐ろしさを描き出す。

  • ★★★ Excellent!!!

恐ろしい怪物に内臓から手足まで食い荒らされ、そのリアルな痛みまでを感じる強烈な悪夢。
地獄のような悪夢が毎晩繰り返される、その原因は——。
何ともどろどろとどす黒いものが不気味に蠢く、ホラーとサスペンスをもじっくりと混ぜ込んだ味わいの重厚な現代ドラマです。

怪物に喰われるという恐ろしい夢に毎晩うなされるようになった主人公、黒森映。
彼女の恋人で才能ある美大院生である中島幸は、彼女の恐怖と苦痛に真摯に寄り添い、その悪夢を何とか解消してやりたいと考える。
幸に連れられ映が受診した精神科の医師・清川は、奇しくも同様の症状を訴えるその他の患者のためにも、この悪夢の原因解明と治療に必死に向き合い始める。
その悪夢は、一体何なのか。
彼らの努力により、謎は少しずつ紐解かれ——。

睡眠。日常のごく一部として捉えられ、それでありながら心身の健康に欠かせない生理的行為。
現実と睡眠の境目である「夢」が持つかもしれないその恐ろしい力に、改めて背筋の寒くなる思いがします。
そして、物理的に「目で見る」ことのできない心、精神というものを、人間はどう研究・解明し、どう扱うべきなのか。そういう部分をも改めて考えずにはいられません。

人間の「心」の難しさ。複雑さ。沼のような底知れない深さ。
自分自身の胸にも潜んでいるかもしれない「闇」を覗き見るような恐ろしさのある、深く濃い物語。この奥深い世界をぜひ皆様の目で、リアルなゾクゾク感に浸りつつお楽しみいただきたいと思います。

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