映は絵に自信があり、美大まで行っていますが、自分の限界に気付かされている女子です。そんな時に出会ったのが、映がとても才能を感じた絵の描き手の幸。
二人は職業は違う道を歩みますが、同棲をします。
映は就職先でもなかなか上手くいかず、とても苦労をします。そのせいでよく眠れなくなり……。
睡眠の本を読んだり、寝具を変えたりと色々しても、睡眠改善派見られず、それどころか悪夢を見るようになってしまう映。
そんな映を幸は心配して、精神科に入院させることに。そこには映と同じような悪夢を見る病人がいて……。
その悪夢の特効薬はなんと!
治ったと思った悪夢。しかし、それが恐ろしい企みによるものだった!
後半は息もつけないようなノンストップの展開です! そんな! そうだったの?!
と読んでいてドキドキハラハラ、そして、怒りと安堵。
きっとあなたも夢について、社会について考えたくなります。ぜひ読んでみてください!!
黒森映は悪夢を見る。自分が喰われていく夢だ。
次第に睡眠をとらなくなった彼女を恋人である幸は病院へ連れていくが……。
物語は個人の人格と精神の問題としてはじまるが、実は他の人間も同じ悪夢を見ていたのだとわかる。
そこから謎が一気に人為的なものへと繋がっていき、最後はひとりの人間へとたどり着く。
端々に散りばめられた要素と驚きの展開、思わずページをめくってしまい止まらなくなりました。
絡んだ糸がキャラが動くたびに少しずつほぐれていく、特上のミステリーと言えます。
ありきたりのハッピーエンドに終わらず、読者にさらに問題を突きつけていく……力強く地に足がついたメッセージ性の強い作品です。
夢を見ない人はいないと思うのですけど、それは起きて時間の経過とともに忘れていくもの。通常は日常生活に支障をきたすほどのものではありません。人を苦しめ、悩ませる夢があるとしたら、それは『悪夢』です。
美大出身の女性、映は仕事上の悩みから心身に支障をきたし、次第に悪夢を見るようになります。
症状は重く、やがて映を蝕んでいき……
この作品の一番の魅力はオリジナリティに富んでいることだと思います。はじめて読むタイプの作品でした。なのにスッと肌に馴染んで心地いい、恐らく夷也さんだから書けた作品だと思います。
もう一つの魅力はリアルさ、映が病に苦しめられるさま、助けようと奔走する恋人、プライドをかけてそれに関わる医師、誰も彼もが命を持って生きているキャラクターなのです。フィクションなのにノンフィクションを追っかけていくようなリアルさ、どんどん病に踏み込んでいく感覚は恐怖でもありましたが快感でもありました。
人を苦しめるのが人なのだから恐ろしい。目が覚めても消えない恐怖、悪夢はどうすれば覚めるのか?
多くの方が関心を持たれるテーマではないかと思います。
面白いのでとにかく読んで下さい。
悪夢をみたら、その夢を獏に食べてもらう。迷信とはいえ、この獏の存在は神秘的なものだろう。
日常生活が緩やかに崩れていく。黒森映の人生は幸福と不幸の繰り返しで、自身に巣食う闇に気が付かないまま体だけが壊れていく。
そんな彼女を支える天才画家、中島幸。眠れない日が続き、やつれていく映のために安眠を模索する。
そこでたどり着いたのが「面白い!睡眠法!」という一冊の本。藁にもすがる思いで、図書館から借りた本だが、あまり信憑性がない。寝具を変えて、いくつかのリラックス法をためしてもそれでも悪夢は続く。
やがて、精神が壊れた映は精神科に入院することとなる。そこで、浮かび上がる不可解な謎。
果たして、この悪夢は感染するのか。それとも拡散されているのか。一体、だれによって?
深まる悪夢の謎と、隠された闇と悲しい真実。その結末に驚愕すること間違いなし。一気読み必至!
人間が夢を見るのは、記憶の処理を行っているからだと聞いたことがあります。スクリーンに映し出された映像や写真が超高速で流れていくような。それがストーリーとして脳内に映し出される。夢のメカニズムとでもいうんでしょうか。
とにかく、睡眠時にも人間の脳は働いているそうです。それを知ってからは、リアリティのある悪夢を見てもコントロールができるようになりました。脱出方法さえわかっていれば、目を覚ましてもすぐに「悪夢」だと認識できるし、混乱せずに済むので便利です。
私も重度の不眠症を患い、通院中です。故にこの作品にはとても興味があり、また私も知らなかった専門知識も豊富で、ミステリー作品としても精神科学としても非常に面白く読み進められました。
映のために奔走する恋人の幸さんが、とても好感のもてるキャラクターで、また清川先生もクセがあるけど正義感を見せてくれました。魅力あるキャラクターに、確かな筆致、さらに共感性の高い本作を、ぜひご一読ください。
最後に夢をみたのはいつですか。それはどんな夢でしたか。
夢というのは不思議なものです。眠っているあいだに現実ではありえないものをみたり聴いたり、時には実感をともなってさも実際に経験しているかのようなきもちになるのですから。
昔から夢については様々な論議がかわされてきました。時に信仰と結びつき、時にそのひとの願望として解釈され、現在では神経生理学によって夢のメカニズムが研究され、徐々にその働きが解明されるようになりました。
夢とは、睡眠時に脳が記憶の整理をしているためにみるのではないか、というのが通説となっています。
ですが、ほんとうのところ、生物が夢をみる理由というものは解明されていません。
科学が進歩してもなお、夢という不確かな領域はまだまだ謎につつまれているのです。
こちらの小説は、ひとりの女性が唐突に悪夢をみるようになり、次第に夢にたいする恐怖心に支配され、眠ることができなくなっていくところからはじまります。彼女は入院を余儀なくされますが、どうやら病院には、まったくおなじ悪夢によって重度の不眠となった患者が複数人いるそうで……――
不確かなはずの夢が現実を蝕んでいくその恐怖。じわりじわりと、こころをかみちぎられていくさま。それはあたかも、獏に咀嚼されるがごとく。
悪夢というその現象に果たして、犯人はいるのか。
ヒューマンドラマとホラーとサスペンスの要素が絶妙に絡みあった、素晴らしい長編でございます。読み始めたら最後、さきに進める指がとまらないはずです。
恐ろしい怪物に内臓から手足まで食い荒らされ、そのリアルな痛みまでを感じる強烈な悪夢。
地獄のような悪夢が毎晩繰り返される、その原因は——。
何ともどろどろとどす黒いものが不気味に蠢く、ホラーとサスペンスをもじっくりと混ぜ込んだ味わいの重厚な現代ドラマです。
怪物に喰われるという恐ろしい夢に毎晩うなされるようになった主人公、黒森映。
彼女の恋人で才能ある美大院生である中島幸は、彼女の恐怖と苦痛に真摯に寄り添い、その悪夢を何とか解消してやりたいと考える。
幸に連れられ映が受診した精神科の医師・清川は、奇しくも同様の症状を訴えるその他の患者のためにも、この悪夢の原因解明と治療に必死に向き合い始める。
その悪夢は、一体何なのか。
彼らの努力により、謎は少しずつ紐解かれ——。
睡眠。日常のごく一部として捉えられ、それでありながら心身の健康に欠かせない生理的行為。
現実と睡眠の境目である「夢」が持つかもしれないその恐ろしい力に、改めて背筋の寒くなる思いがします。
そして、物理的に「目で見る」ことのできない心、精神というものを、人間はどう研究・解明し、どう扱うべきなのか。そういう部分をも改めて考えずにはいられません。
人間の「心」の難しさ。複雑さ。沼のような底知れない深さ。
自分自身の胸にも潜んでいるかもしれない「闇」を覗き見るような恐ろしさのある、深く濃い物語。この奥深い世界をぜひ皆様の目で、リアルなゾクゾク感に浸りつつお楽しみいただきたいと思います。
うまくレビューを書ける気がしませんが、この作品の素晴らしさ、作者である夷也荊さんの素晴らしさを1人でも多くの人に伝えるために書きたいと思います、とだけ前置きさせてください。
圧倒的な世界観と多様な情報、そして作者の筆力で、この作品は成立していると強く感じます。
誰にも真似できない、独特的な設定とシチュエーションの数々。
物語の最後にある『参考文献』という項目からもわかるように、様々な種類の知識をかなりの数使用。
そして、それらを読者にわかりやすく説明するだけではなく、世界にずるずると読者を引き込む表現力。
素晴らしい技術だと思います。
この作品の題材は、キラキラしたファンタジーや恋愛に比べると地味ですが、物足りなさは全く感じませんでした。むしろ大満足です。
また、題材は正直言って少し難しいです。でも、わからなくなることはなかったです。
派手な展開はあまりないのに続きが気になりながら読んでいました。
展開は全く読めません。どこに着地するのかも全く想像がつきません。
しかし、着実に物語は、前に進んでいる。
作者の丁寧なエスコートによって、小説を読んでいる感覚です。
この小説で『面白い』の新しい形を知りました。
是非、貴方も圧倒的で異質な世界観に触れてみませんか?
読了後には、きっと読書の楽しみが増えているはずです。
これは、夢にまつわる物語です。
夢を自分でコントロールできたなら、いい夢ばかり選んで見たいものですが、ここに登場するのは悪夢でした。
その悪夢に取り付かれた患者たち。
患者に寄り添う身内や恋人。
悪夢を取り払おうと必死になる医師。
その悪夢で、本当は世界をいいものにかえたかった人……。
物語の中には、現代社会にある問題がたくさん隠されています。
読み進めながら、その問題とどう向き合って行くべきかを考えさせられるお話でもあります。
とてもしっかりと構想が練られていて、のめり込むように読みました。
元々文章力に優れた作家様なので、商業本と同じような気持ちで読み進められます。
是非、読んで頂きたい作品です。
睡眠中の悪夢を皮切りに事件は始まります。
最初は不遇な美大生の苦悩の日常について描かれますが、それが恐ろしい『悪夢病』に昇華し、精神科病棟に入院するまでになる。
恋人の描いた絵によって病状は回復するが……!?
全体としてややおどろおどろしい雰囲気が取り巻きながら、人の精神の闇に切り込み、後半はさらに恐ろしい展開が待ち受け、終盤は衝撃の真相を突き付けます。
エピローグはぐさりと突き刺さるような、作者様からの強いメッセージを感じ、同時に読者に問題提起されます。
社会派ミステリーとカテゴライズされるでしょうが、扱っているテーマは斬新かつ緻密。
ネタバレになるので詳細はお読み頂きたいのですが、何かを考えさせられるような非常に力強い作品です。
黒森 映は、美大生でした。子どもの頃から絵を描くことをよりどころにしていた彼女は美大へ進学しますが、そこは優れた才能の集まるところ……。彼女は、自分の才能の限界に気づき、打ちのめされてしまいます。大学で天才的な才能の持ち主・中島 幸に惹かれ、つき合い始めたものの、就職先では人間関係に躓き、やがて悪夢にうなされるようになります。
幸は、恋人の映を救おうと努力しますが、どうしてもそれは医療の方向へ向かいます。二人は、優秀な精神科医・清川 傑と出会います。清川は、映と同様に悪夢に苦しんでいる患者たちを救おうと行動しますが、それは、とある人物によって別の方向に捻じ曲げられてしまいます。
登場人物たちの、もつれ、絡んだ思惑が行き着く先は――
一人ひとりの境遇と心理状態が丁寧に描かれていて、そのリアリティが読み手に迫ります。特に、映の葛藤やコンプレックスは、身近に感じる方が多いのではないでしょうか。
珠玉の心理サスペンスです。
こうなりたいと思い描く理想の自分と、そこから程遠い現実の自分。
受け入れられない現実を抱えたまま、社会に馴染めず精神が磨耗していく……
そんな心の闇に滑り込む悪夢の病をテーマにした、ミステリ調ヒューマンドラマです。
リアリティのある精緻な筆致で綴られるのは、きっと誰もが覚えのある劣等感や挫折感。
読者は、前半部の主人公である映の心境に深く共感することでしょう。
そんな映を襲った、恐ろしい怪物の登場する悪夢。
特定の患者の間で蔓延する『悪夢病』の謎を紐解くため、映の恋人である幸や主治医の清川は調査を進めます。
なぜ彼らは悪夢を見るのか。
そこに誰かの悪意があるのなら、その悪意は何から引き起こされたものなのか。
明かされた事実に、胸を衝かれました。
あぁ、みんな同じなのかもしれない、と。
自分が何者にもなれないと気付いた時、その原因や責任をどこに求めるのか。
現代社会の病理とも言える問題に切り込む作品だと思いました。
非常に読み応えのある物語です。
この作品の特徴は、丁寧な描写と重厚な表現による、本格的なミステリー作品として楽しめる文体だと思う。
WEB小説界隈は、ライトでシンプル、スカッと爽快な文章を求められる傾向にあるけれど、この作品はそうした潮流とは正反対のヘビィなノベル、ヘノベだといえるかもしれない。
扱う題材も、人間の精神の部分であったり、悪夢であったりとなかなか重い。それらの謎がまず積み重なっていき、ここからどういった解決をみるのか、とても楽しみです。
ラノベはそろそろ卒業しようかな、と思う方に、WEB小説にもこういった作品があるよと、是非一読をおすすめしたい。
獏が人間の悪夢を食べてくれる。
一般的に語られる伝承が本当だとしたら、眠れない人間には悪い夢が蓄積するのではないでしょうか。
眠っているあいだに成されるべき脳の整頓が、滞るのですから。
序盤は、芸術を専攻する若者たちの学校生活から。
理想と現実のギャップには、誰しも悩んだ経験があるはずです。
自分の才能の限界を感じます。
止まらない時間の中で、苦い挫折を乗り越えていきます。
社会に出て職を得るものの、不適応から不眠が始まります。
そして、睡眠障害から休職、病院通いを余儀なくされます。
はたして、主人公は救われるのでしょうか。
的確な描写の純然たる文学。読み進めたくなる物語です。