4.発進!

「わかった。世話になったな。俺はゴラドっていう。何かあったら俺たちの仲間かその辺の鳥に声をかけてくれ。じゃあ元気でな。」


「私はシャルナよ。じゃあ、あなたもお元気でね。」


私はそう言って再び艦内へと戻った。


「お帰りなさいませ。現在、発進シーケンスを実行中です。25分後に発進可能です。ところであなたをどうお呼びすればよろしいでしょうか?」


「私はシャルナ。本当は、シャルナ・アズル・アストラって言うんですけど、シャルナと呼んで下さい。それで私はあなたを何て呼べば良いですか?」


「私は管制システムです。すでにシャルナ様とは思念波のリンクが確立していますから意識をこちらに傾けていただくだけでお呼びになれますが...」


「いや~ 何か名前を呼ばないと呼んだ気がしないのでーー」


実は前世で某通販会社製のAIスピーカーを愛用していた身としては名前を呼ばないと気が済まないのだ。


でも彼に明日の天気とか今の時刻を聞いたらちゃんと答えてくれるのだろうか? 


核兵器の何万倍もヤバい兵器を管理している彼には迂闊なことは言えない気がするな...


「それではシャルナ様が私に名前を付けて下さい。」


一瞬、「アレ○サ」とか「ク○ーバー」とかが浮かんだが本当にパシリに使ってしまいそうなのでそれは止めた。


名は体を表す…、やっぱり名前は重要なので熟考することにした。


「良い名を考えてみます。少し時間を下さい。それと、艦名も変えても良いですか? 今の名前は憶えられませんので。」


「楽しみにしています。艦名の変更も問題ありません。すべてシャルナ様の思い通りになさってかまいません。」


私はその言葉に頷いて、それから声に出して宣言した。


「本艦は準備が整い次第、この地より発進し、本惑星赤道上空の静止軌道へ移動します。コース設定、軌道上の位置については管制システムに一任します。」


「了解しました! 本艦は発進後、本惑星赤道上空の静止軌道へと移動いたします。」


「目標到達までしばらく時間がありますので、お食事などをなさることを具申いたします。専任の従卒がご案内いたします。」


「目標到達後、今後の予定などのお打ち合わせをしたいと思いますので。よろしくお願いいたします。」


私の目の前には一人の女性が立っていた。

二十歳前後ぐらいだろうか。


何か某宇宙戦艦アニメに登場する女性クルーを彷彿とさせる。長い髪と、おそらくこの船の乗組員のユニフォームであろう体にぴったりの服装がそう見せるのかも知れない。


それにしても生きている人間にしか見えない。


この船には人間はいないと言ってたから彼女はアンドロイドか? 


それにしてもどうやって作るのだろう。こんな精巧なロボットを。


彼女を見とれていると、彼女が口を開いた。


「お部屋へご案内します。こちらへどうぞ。」


頭の中でなく耳から入ってきたその声は全く自然な言葉だった。


管制システムの、いかにも人工音声っぽい抑揚の乏しい言葉と比べて、本物の人間そのものの声だった。


私は彼女に連れられて、部屋の後ろにあるエレベータらしきものに乗った。


「これは居住フロアへ行くエレベーターです。前に立つと扉が開きますので、中に入って『指揮官室』と念じればその該当するフロアへ行けます。」


今になって気付いたことだが、ここの機材は思念波で制御するのが基本らしい。何となく使いこなせそうな気がしてきた。


指揮官室は居住フロアのエレベーターホール右側すぐの所にあった。これなら迷うことはないだろう。


彼女が扉を開けてくれたので中に入って固まった。


(デカっ! ここに一人でいろって言うのー!)


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