7.再会
「それでレムニスの所在は判ったのか?」
王宮へと戻る馬車の中で、父上様が私にそう尋ねた。
「いいえ。残念ながら兄上様の行方は全く掴めておりません。」
「そうか。我らが王宮へと戻れば、遠からぬうちに戻って来るであろうが、心当たりを探してみるとしようか。」
父上様には、兄、レムニスの居場所について心当たりがありそうだった。それで、さほど心配していない様子だったのだろう。
それから私はここまでの経緯(いきさつ)をかなり改変して話した。
タケミナカタのことは言っても多分信じてもらえないし、信じたら信じたで、世界征服とか統一国家だとか、非常に面倒なことになりかねないからだ。
そこで、鳳魔鳥に私だけが連れ去られて、テントラ王国の辺りで、ある人物に助けられ、今回の件はその人の仲間が手伝ってくれた・・・ということにした。
私達が王宮へ戻ると、救出された宰相ほか、重臣たちが迎えてくれた。
その後は入浴、着替え、晩餐と、10日前と同じ、また元のお姫様モードの生活に戻った。
ちなみに、ジジが王都でこの世界のファッションを視覚的なデータとして収集してくれた結果、今は下着も、この世界の常識の範囲内のものを着けている。なので、侍女たちに驚かれることはなかった。
それにしてもジジは、一体どこまで潜入しているのだろうか? 覗きと盗撮の常習犯? やっぱり猫には気をつけよう!
あと、お風呂で自分、というか量産型ワタシの身体を見たら、胸のホクロもちゃんとあって驚いた。いつ、どこで調べたんだ? これは深く考えないでおこう。
こういう点といい、肌の感触とかといい、侍女たちも、これが本物の人間ではない、と気付く者はいないと思った。
晩餐が終わったところで、私は意識を元の体の方に戻した。
意識の切り替えは、その時、目を閉じておけば、瞬間移動したみたいな感じになって、なかなか面白い。
王宮の方は、しばらく量産型ワタシに任せておくつもりだ。
意識を切り替えれば、互いにその間の記憶が共有されるようになっているので、「今さっきも、ご飯食べましたよ…」てなことにはならない。
私がプロトタイプシャルナに意識を戻した頃、シータもジジと戦闘ロボットを回収して戻ってきた。
ここからが作戦第二弾である。
これから、北の大森林ではぐれた私の供、ミニエとパラを探し、接触する。
このまま、あの簒奪未遂事件のことが公表され、私が王宮に戻っていることを知れば、二人は放っておいても帰参するだろうが、その前に二人と会い、二人に、この秘密を話しておこうと思っているからだ。
私は二人の安否についてはあんまり心配していない。私がいない状態では追手の目は緩いし、二人とも自分の身は守れる。パラなら正規兵とでも互角に戦える。
そんなわけで、監視衛星と、ジジと一緒に地上に降下させた偵察ドローンを、今は二人の捜索に集中させているのである。
2日後。
二人がミトラ王国の王都からテントラ王国方面へ向かう街道上を歩いているところが確認された。
2時間後の到達地点を予測して、そこで二人を待ち構えることにした。
小型揚陸艇でその地点へと降下する。私は生身の人間なので、無茶な速度での大気圏突入は無理!ということで、1時間以上かけてゆっくり降りた。
メンバーは私とシータ、それと念のため戦闘ロボット4体。これは単に下ろすのが面倒だった・・・ということもある。
現場は遮蔽物の全くない乾燥地帯なので、街道腋の荒地に揚陸艇を置いて光学迷彩で隠しておいた。
予定時刻の10分ぐらい前に、私が街道の真ん中に立って二人を待ち構える。
シータは艇内で、上空に旋回させている偵察ドローンの映像をチェックしつつ、周囲の監視を行っている。
やがて、小さな人影が二つ現れた。少し近づいたところで、二人が一斉にこちらに駆けだした。
「姫さまあああーっ!」
「姫殿下ー!」
ミニエとパラが私に近付いてきて、三人で抱き合った。
「よくぞご無事で!」
パラが嬉しそうに言う。
「ひべざばあー。あの時はどうひおうかとおぼいまひたひょー!」
ミニエが涙と鼻水を大量に撒き散らしながら言う。
私はウンウンと頷きながら二人の肩をぽんぽん叩いていた。
「二人には心配をかけました。」
私はそう言って二人を見つめて、続ける。
「二人には色々と話さないといけないことがあります。ここは往来もありますから、こちらへ来て下さい。」
私が揚陸艇の方へ歩き出すと、シータが光学迷彩を解除し、揚陸艇の姿が露わになった。
「うわわあっ! これは何ですかー!」
ミニエが後ろへ飛び退き、パラが私の前へ出て剣に手を掛けた。
「大丈夫です。詳しい話は中でしますから...さあ、乗って...」
私は二人を艇内へと案内した。
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