8.タケミナカタへようこそ!
「こちらはシータ。私の護衛をしてくれています。」
私は二人にシータを紹介した。
「シータです。よろしくお願いします。お二人のことはシャルナ様から伺っております。」
「こちらがミニエで、こちらがパラです。」
二人は軽く頭を下げる。まだちょっと警戒しているのかな?
実は既に揚陸艇は離陸して母艦に向かっている。外はモニターを点けないと見えないので、二人はただ街道脇の小屋の中にでもいるつもりだと思う。
「ラゴナスの一件は、こちらのシータさんたちの活躍のおかげですべて片付きました。父上様、母上様、兄上様は皆、王宮に戻られています。」
私は二人にそう告げた。
「ええっ!」
ミニエが意外そうに声を上げる。
「エンセルやグラドスは?」
パラが問う。
「加担した貴族も含めて、全員が捕縛されています。」
「それで殿下はどうしてここにいらっしゃるのです? 鳳魔鳥に掠われた後、どうされたのですか? ここで私たちをお待ちになっていたように見えましたが、何故、そのようなことがおできになるのです。まるで天から見張っていたように...」
パラが蓄め込んでいた疑問を一気にぶつけて来た。
「私は鳳魔鳥に掠われて大高地に連れて行かれたのです。そして、そこで、とんでもない物に出会ってしまったのです。」
私がそう言うと、二人は口を揃えて...
「大高地って本当にあるのですかー? 生きて帰れるんですかあー?」
私は頷いて、話を続ける。
「これから先は実物を見ないととても信じられないでしょうから場所を変えましょうね。それに...」
「食事もろくにせず、お風呂にも入らず、私を探し続けていたのでしょう? そのボロボロの姿を見れば判ります。だから、ちょっとゆっくりしてからお話しますね。」
その時、シータが思念波で母艦に到着したことを知らせてきた。
「こちらへ来て下さい。」
私たちは揚陸艇の乗降口から直接トランジットポッドへ乗り移った。
二人はトランジットポッドの窓から、時々見える光の光跡を不安そうに眺めている。
「もう夜になったのですか?」
ミニエが不思議そうに聞くので、
「いいえ、ここは大きな城の中です。もうすぐ着きますから...」
やがてトランジットポッドの扉が開き、私の部屋がある居住フロアに到着した。
「ここが私の部屋です。どうぞ入って下さい。」
私が先に部屋へ入り、二人を招き入れて。最後にシータも入った。
室内には人が2人立って出迎える。一人はユキだ。
「シャルナ様、お帰りなさいませ。」
ユキが微笑んでそう言い、私の後ろに続く二人に、
「いらっしゃいませ。私はシャルナ様の専任従卒で、ユキと申します。」
続いて、もう一人の人物が声をかける。こちらは男性だ。
(誰? こいつ?)
私が訝しんでいると...
「はじめまして、と申し上げた方がよろしいでしょうか? ! シャルナ様。私です、孔明です。」
こいつもアンドロイドで自分を顕在化させたようだ。シータとかの活躍を見て影響を受けたのか?
これ、どう見ても私の脳内データからイメージをパクったな? 某有名マンガに出てくる諸葛孔明そっくりじゃないか?
続いて孔明はミニエとパラにも挨拶をして、一同はロビーにアルテーブル席の一つに腰を下ろした。
ユキとシータは厨房の方へと向かった。
私は、時々孔明に補足説明をさせながら、二人に、大高地であったことやこれまでの顛末を話した。
一部はこの世界の人にも分かるよう改変しているが、このタケミナカタというとんでもない存在のことは隠さず教えた。
二人は、最初はポカーンとして聞いていたが、それが冗談や妄想の類いではないことだけは理解したみたいだ。私の言うことなら何でも信じる…という感じである。
話が一区切りついたところでユキが食事の準備ができたと言ってきたので、場所をダイニングに移した。
食事はレーションではなく、ちゃんと調理したものに切り替わっていた。
ただ、私だけのために食品工場を稼働させるのはあまりにも効率が悪いと、地上戦で使用する野営用キッチンユニットの最も小型のものをここの厨房に持ち込んで使っているそうだ。10人分ぐらいは楽に作れるらしい。
今日はハンバーグとサラダ、スープ、パンとデザートはジェラート。二人はフガフガ言いながら食べていた。
その後、3人でお風呂に入った。ここでは主従ではなく友人として接してほしいと頼んだので、渋々従ってくれた。
着替え用に用意された服を見て、二人はテンションを上げていた。特にミニエは大張り切りで、自分のではなく、私の服を選んでくれた。
「シャルナ様は可愛いから何を着ても似合いますねー!」
結局、10回ぐらい試着させられた。
さて、寝る段になって、ユキが二人をゲストルームに案内しようとしたら、猛烈に拒絶されて、結局、私の私室に補助ベッドを入れてもらって、3人で寝ることになった。
多分、私と一緒にいたいというより、こんな奇妙な場所で二人きりになるのが不安だったんだろうなーと思う。
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