6.閑話-タケミナカタ艦内のご案内
私専任の従卒であるユキが歩きながら説明する。
「星域管制母艦タケミナカタの諸元は次の通りです。」
全長:16500m
全幅:7500m(艦船発着用シェルターパースの突起部を含まず)
全高:1600m(上部構造物分450mを含む)
なお、これらの単位は、この世界には統一した度量衡が存在しないため地球の単位を使用している。
「こちらの居住フロアは乗組員と運営スタッフが居住するエリアです。中央指揮所の直上に位置しています。」
「乗組員は何人ぐらい必要なのですか?」
私は聞いてみた。
「乗組員は標準24名で構成されますが、最少1名でも運用可能です。民間人を収容している場合は行政スタッフが加わります。最大300名分の居室と厨房、食堂、医務室、娯楽室、スポーツジム、自習室、会議室などがあります。」
(思ったより少ないな... そういえば自衛隊の護衛艦も人手不足で困っていたけど同じ事情かな?)
「また、この区画と隣接してゲスト用区画があります。こちらは100室の客室とホール、ダイニング、談話室、会議室などがあります。医務室などはスタッフ区画と共用です。」
私たちは区画の端に待機しているトランジットポッドの前まで歩く。
「艦内の移動はトランジットポッドで行います。これはご存知の通り、垂直、水平に移動するエレベーターのようなものです。」
私は艦内のすべての場所へ移動可能だけど、人によって行ける場所の制限があるそうだ。
(そりゃ軍艦だもんねー)
トランジットポッドに乗って1分ぐらい移動して降りると、そこは空港か駅のような広い吹き抜け空間だった。
そこを少し歩いて建物を出ると...そこは街だった。
道路沿いにはオープンな箱形の自動車のようなものが並んでいて、遠くには超高層のビルが林立していた。
ユキに案内されるままに1台の自動車に乗り込むと静かに動き出した。それにしてもここはどう見ても街なのに誰もいないのですごく不気味である。まさにゴーストタウンとしか言いようがない。
「街区の中を一回りしてみますね。今出てきたのが到着ロビーです。あそこは港湾区画と繋がっていますので、地上から来た民間人はまずあそこに到着することになります。」
車が静かに走りはじめた。これには車輪が付いているようだ。
「この辺りの建物は病院、市民センター、学校などです。もうすぐ走ると公園が見えてきますよ。公園の部分が街区全体のほぼ中央になります。」
さらに少し走ると、木がたくさん生えた区画が見えた。向こうには児童遊園のようなものやベンチもいくつか見える。
公園の区画を通り越すと、今度は超高層ビルが多数連なる目抜き通りみたいな区画にさしかかった。
「そしてこの辺りがダウンタウンエリアです。地上部には商業施設、娯楽施設など、その上が住宅となっています。最大2万人が居住可能です。」
「あのー 空は人工のものですか?」
私が尋ねる。
「はい。空は人工です。時間によって太陽の画像が移動して、明るさも変化するようになっています。夜にしてみましょうね。」
ユキがそう言うと周りがだんだん暗くなってやがて完全に夜になった。月や星まで出てる。天候や季節感はどうなんだ?と尋ねてみると。
「季節感が出るように四季に合わせて気温を調整しています。天候は中央公園でだけ雨や雪が降るようになっています。植物はみんな本物ですので水やりのためでもあります。街路樹も本物ですがこちらは自動給水装置で対応しています。」
まあ、本物と言っても遺伝子操作であまり維持管理に手間がかからないようにはしてあるんだと思う。
次に私たちは一旦到着ロビーまで戻って港湾施設を見に行った。
ここは艦上デッキを利用した施設で8基の発着パースがある。ここから見えるピラミッド形の構造物がさっき行った民間人用街区になるという。
なお、発着パースは他に感の両側面にシェルター方式のが合計12基、艦尾にドック式のが2基あるそうだ。
次に行ったのは軍区画。工場施設や格納庫とか。正直、何が何やらさっぱり分からなかった。何となく分かったのは、地上戦と宇宙戦では使用する兵器が違うことぐらいだ。
あと、地上戦用兵器には飛行機と戦車の区別がないのは新鮮だった。低く飛ぶか高く飛ぶかで、どっちにしても飛ぶ兵器だからだそうだ。
それと、地上でも宇宙でも使う簡易型汎用ヒト形デバイスという兵器は見た目がザクそっくりでワロた。
サイズが色々あるのだが、これのLLサイズが体長16mぐらいでサイズ感がだいたい合う。
自律型ロボットで人が操縦するものではないが、赤く塗ってくれるよう頼んでみよう。
民生用の製造施設も同じような感じで、あんまりよく分からなかった。今は稼働していないのもあって、ガランとした空間としか思えなかった。
最後に研究開発区画へ行った。ここは新しい製品の開発や試作を行う施設だが、アンドロイドやバイオロイドといった高度な製品の製造も行っている。
ちょうど、私のコピーアンドロイドともう一体のアンドロイドのレンダリングをやっている最中だったが、本当に信じられない光景だった。全く想像のつかない技術水準に目を見張るしかなかった。
ふと、足下に何か触れる者を感じて視線を下げると、そこには一匹の黒猫がいた。「ニャー」と鳴いて、私にスリスリしてくる。
(猫は王城にもたくさんいたけど、まさかここにも...?)
「これは今回の作戦のために作られた情報収集用アンドロイドです。まもなく王都に潜入します。」
ユキが説明してくれた。
「ジジ、おいで! 頼んだわよ!」
私は思わず、その猫を『ジジ』と呼んで抱き上げると、ゴロゴロ言いながら目を細める。柔らかさ、温もりは本物としか言いようがない。
前世では一応バイオ関係の研究者だった私にとっては、ここはまさに夢の世界。頼めば、たいていの物は作ってくれるそうなので今後も活用しよう。
あと、艦内には動力部区画があるのだが、そこは生身の人間が行ける場所ではないと言われた。アンドロイドでも危ないらしい。
ただ、動力部のエネルギー補給はどうなのか気になったので尋ねてみたら、跳躍航行を頻繁にしないなら、あと百万年ぐらいは軽くもつだろうということだった。
とりあえず心配するのはやめにした。
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