6.兄上様の進学問題
大人たちが社交シーズンに奔走しているこの時期。
特定の年齢の人たちにとっては、思い、迷い、悩む時期である。
そう、進学問題だ。
この世界の一般的な学校制度は、初頭学院が10歳から3年間、中等学院が13歳から3年間、高等学院が15歳から3年間というのが基本である。
また、高等学院以外に、15歳以上になれば、商業学院や騎士学校、工匠学院、薬師学院などの専門学院へ進学する者も多い。
この世界屈指の富裕国であるアストラ王国には、工匠学院と薬師学院を除いて、すべての種類の学校が存在し、普通学院は複数校ある。
アストラでは、広く人材を得る目的から、王立の初頭、中等、高等学院は、王国民の授業料が免除され、身分の差なく入学できる。
地方出身者のために寄宿舎まで無料で提供されているが、その分、競争倍率が高く、非常に難関校となっている。
王族や高位貴族の子弟は、初頭学院へは行かず、家庭教師を付けている。学校は中等学院からが基本のようである。
そういうことで、アストラ王家では、兄上様が王都にある王立中等学院へ通っており、もうすぐ11歳の私には家庭教師が付いている。
ここだけの話だが、兄上様は無試験で、難関と言われる王立中等学院へ入学している。「王族枠」というヤツだ。裏口ではない!
そういえば、今年、13歳になるエレノア嬢は、アストラのの王立中等学院へ進学を希望しているそうだ。あちらの国王陛下や王妃殿下はかなり難色を示しているみたいだけど...
そして、もうすぐ中等学院を卒業する兄上様は、何と、世界最高峰と言われるクラウゼン高等学院への進学を希望している。
クラウゼン高等学院というのは、西方地域の中心部、ブランゲルン王国にあるクラウゼンという街にある高等学院で、政経、軍略、商業、工匠、医薬の5つの学科を持つ、総合学院で、その水準は世界最高峰と言われている。
元々は。アストラの王立高等学院へすんなり進学するものと、父上様も母上様も多寡をくくっていたが、ここに来ての大ドンデン返しにかなり慌てている様子だ。
兄上様は、あの事件の折、自分は隠れ家のひとつに潜んでいただけだったことに、忸怩たるものがあるようで、それとは対照的な私のその後・・・ということもあって、こういうチャレンジに出たようだ。
まあ、私も好き好んで、あんなことになったワケじゃないし、王位継承権第1位の人の行動としては、極めて懸命な判断だったと思うけど...男の子の心情はなかなか難しいのである。
しかし、クラウゼンは遠い。アストラの王都から馬車で1ヶ月以上かかる。
クラウゼンの街自体は、世界中から王族や高位貴族の子弟が集まる土地柄、非常に治安が良い。
そして、「学術都市」とも呼ばれ、世界でも類を見ない特殊な立ち位置の街でもある。
私は、兄上様の味方だ。冒険をやるなら今のうちが良い。
私も、自分で望んだわけじゃないけど、あんな大冒険をやらされて...でも、結果として、本当に良かったなーと思うから。
それに、兄上様がクラウゼンへ行けば、私も便乗できるかも?という下心もある。
あの事件以来、王家での私の発言力が妙に増したことで、大勢が兄上様の方に傾き、父上様、母上様は渋々承諾したのであった。
世界最高峰と言っても、ここでも「王族枠」があるようで、中等学院の推薦状もあって、政経学科へ無試験で入学できることになったそうだ。重ねて言うが、裏口ではない。
ただ、クラス分けのための試験があるようで、それの受験を考えると、2月中にはアストラを出発しないといけないとのこと。けっこう慌ただしい。
ちなみに入学式は5月だ。
私も付いて行く気満々で準備にかかった。
もちろん、孔明たちや、ミニエ、パラも連れて行く気だ。
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