5.よろず商い相談所
数日後、私は、エレノア嬢とミイナ嬢を、タケミナー商会へ案内した。
さすがに王女3人となると、その護衛も物々しかった。
私にはミニエとパラだけたけど、二人には護衛兵士が店内にまで付いてくる。
仕方ないとは思うが、この店の店主と店員の正体を知る者とすれば、かなりうんざりしてしまう。
エレノア嬢とミイナ嬢に、孔明とユキ、シータを紹介した。
二人とも、やはり王族である。孔明についてはかなりの前情報を持っているだろう。
柔和な微笑みを浮かべながら、全身をスキャンするように観察しているのを、横で見ていた。私も王族なので判るのだ。
最初はニキビの話題が出て、洗顔や食べ物とか、孔明が簡単な対処法を説明する。
次に、ミイナ嬢が尋ねた。
「孔明様は、優れた工匠でもあると伺いましたが、お得意な分野はおありですか?」
「どちらかと言えば、カラクリ物が、得意と言うか、スキです。」
孔明が答えた。AIに「好み」とかがあるのか・・・とちょっと感動した。
「私の国、ローデンには、木と鉄がたくさんありますが、これで何か作れないかと...武器ばかりではつまりませんわ!」
ローデンでは、良質の鉄が算出され、薪も豊富なので、武器や武具といった軍需産業が発達している。
「木でしたら、ミラトリアにも売るほどございますわよ。」
エレノア嬢も口を挟んだ。
「木は色々と使い道がございますね。鉄は薄い板が作れれば色々と使えるのですが...」
孔明が言う。
実際、この惑星の資源探査をした時、木は多少インチキをしても、この世界で違和感なく受け入れられそうなので、活用しようという話になっている。
「あのー、もっと白くて強い紙とかは作れませんか? たしか、紙って木から作るんですよね?」
私も加わった。
「紙作りに適した木や草がありますので、ローデンやミラトリアの木が適しているかは判りません。ただ、どんな木でも一応は紙になりますから、今よりマシなものが作れる可能性は高いでしょう。問題は水が豊富か?ということですね。」
孔明が答える。さすがだ!
「水は豊かですよ! そのまま飲めます。」
ミイナ嬢が答える。
「でしたら、紙作りは可能でしょう。鉄で製造用機材も作れますし。ただ、あんまりやり過ぎると、その水が汚れて飲めなくなったりしますから、高級品を少しだけ作って、高く売るのが賢いやり方でしょうね。」
孔明がそう結論づけた。
「なるほど! 紙ですか。良い紙があれば、私も欲しいです。早速、父上様に教えて差し上げますわ。」
ミイナ嬢がポンと手を叩いて言った。
「孔明様。ミラトリアでも、紙作りは可能でしょうか?」
今度はエレノア嬢が尋ねる。
「水の便さえ良ければ可能だと思いますが、隣国と同じことをすると、互いに足を引っ張り合うことになりかねません。」
孔明は続ける。
「ミラトリアとローデン、二つの国は親密なご関係かと存じます。ならば、互いに良いところを出し合って、協力してことに臨まれるのが良策かと思います。」
孔明の言葉を聞いて、二人の王女は、互いに顔を見つめ合いながら頷いた。
「実は、今、シャルナ様のご提案で、紙作りと、その紙に文字や絵を書く機械、それと新型の馬車を考えているところですが、お二方のお国に助けていただくことがあるかも知れませんね。」
「私もお父様に教えて差し上げますわ!」
エレノア嬢がそう言った。王族とは、たとえ子どもであっても、常に国益を考えて、発言、行動するように躾けられているのである。
二人が国王陛下に言わなくても、側に付いている侍女から上に、この話は伝わるだろう。
何か、新事業コンサルタントみたいになってしまった。
実際、最近、孔明の博識に魅かれて、この手の相談に来る人が増えているのである。
そして、二人は帰る時間となった。
お土産に、例の薬用石鹸と薬用化粧水を差し上げた。
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