7.閑話-学術都市クラウゼン
学術都市クラウゼンは、「中原の覇者」と謳われる、大国、ブランゲルン王国の王都の北方に位置する街である。
ただし、街は軍事と外交を除いて自治が認められている。事実上の自由都市である。
街は、15歳以上の市民によって選出された司政官と参議院による議会制民主主義の体制を執っており、市民には学生も含まれる。
街には、クラウゼン高等学院をはじめとして、多数の学校がある。専門学院も、農業、土木、治水、天文、料理など、世界でここだけというものもあり、いずれも、そのレベルは世界最高水準となっている。
また、様々な研究機関や学術団体、出版社なども多数存在する。
なお、出版社といっても、この世界では、まだ写本が中心で発行部数も限られ、非常に高価なものである。
尤も、識字率が低いため、書物を買うのは一部の特権階級に限られているが...
街では、学術関係の機関や関係者が多く集まるため、それに合わせて、展示会や講演会、学術会議、発表会などを行うための施設が多い。
宿も、そういったイベントが開催できるホールを併設している大規模なところがいくつかある。
中でも、最大規模なのが「クラウゼン・シティ・ホール」という施設である。
大型のイベント会場と、宿泊施設、飲食施設もある、前世の記憶で言うと、「コンベンションセンター」と言って良い施設である。
ここで、「クラウゼン・メッセ」という、毎年5月に開催される国際見本市がある。
世界各国から、最新鋭の技術や製品が集まる、世界最大、最新、最高の展示会なのである。
私としては、ここに、これから私たちが開発する技術や製品を発表して、世間を驚かせたい・・・と思うのだ。
ただ、今年のメッセまでには、もう150日ぐらいしかないので、今年は、その片鱗というか予感みたいなものを発信したいなーと考えている。
私は、やっぱり、紙と印刷技術だ。
それも、この世界で自然に受け入れられるものにしたい。
製紙方法自体は、別に手すきで良いのだ。そんなに大量生産する必要はない。
問題は、製紙原料の方である。前世の知識ではコウゾやミツマタを使えば、比較的容易に作れそうだが、この世界ではそれがあるかどうかも判らない。
できれば、北方の森林資源を活かしたいので、針葉樹を砕いてパルプができれば問題ない。
水車ですり潰し、雪で漂白。真っ白である必要はない。
印刷は、とりあえず木版画で良いだろう。前世の記憶にある、瓦版や浮世絵の技術である。多色刷りもできるし。
この世界には、鉛は普通にあるので、活版も大丈夫そうだ。
孔明は新型の軽量馬車を作りたい、と言っている。
車体に圧縮集成材を使った軽量タイプのものを作るという。
クラウゼンへは是非、新型馬車で行きたい!と、既に艦内工場で製作中だ。仕事が速い!
今度のは、キャンピングカーみたいなのにするとか。
私たちは、別に車内で寝泊まりしなくても、ワープゲートで、王都の屋敷なり、母艦なりに行けば良いんだけど、これはあくまでも、デモ用だとか・・・
かなり車体が大きくなるので、圧縮集成材が生きてくるのだ。
ちなみに、これの切れっ端が、この間のオ○ロゲームのコマに化けた。
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