2.異世界転生者と異次元転移物体
1話投稿したところで早速フォローをいただきました。ありがとうございます! ちょっと感動しました。
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(継ぎ目が全然ない! 入口らしきものもない! 建物という線は薄いかなー。 建物としては大きすぎるし...)
私が思案にくれていると不意に頭の中に誰かの声が聞こえた。
「思念波スキャン 解析完了 同調開始 言語解析完了 同調開始・・・ 本艦は星間連合所属、星域管制母艦ンドッツイッアッガグレスタ です。」
抑揚のない声が頭の中に響いた。
「えええええ~っ! 本艦って、これ船なの? 星域って、宇宙船なの? 何で陸地にあるの? こんな大きいのが飛ぶの? 」
私は狼狽えて声を上げた。
「驚かせて大変申し訳ございません。これまで何体かの先住知的生命体と接触を試みましたが、我々の思念波パターンライブラリに合致するものがなく成功したことがなかったのです。}
声は一呼吸置いて続ける。
「それが、あなたの思念波パターンで合致したためこうしてコミュニケーションをとらせていただきました。お見かけしたところ。あなたは10歳前後の女性に見えますが、思念波は成熟した成人のそれに見えます。非常に興味深い事象です。」
(前世の記憶、バレてる?)
彼が指摘したことは、私が前世の記憶を持つこと、と関係しているのだろうと思った。
たしかに私は21世紀の地球の日本で、大学の研究室という多少浮き世離れした世界とはいえ、20歳代後半まで社会人として生活していたのだから...
そして、思念波云々の話から、ひょっとしたらこの星間連合とやらいう国と地球は同じ次元空間に存在していたのかも知れないな? と思った。
「いえ、突然声がしたのでちょっと驚いただけです。気にしないで下さい。」
私は努めて冷静な体を装って答えた。横にいる鳥さんは、私が一人で話しているのを見て、不思議そうに首をかしげて見ている。
「あなたとゆっくりお話をしたいと思いますので艦内へおいでいただけませんか? 申し遅れましたが、私は本艦の管制システムです。本艦には現在、有機生命体、この惑星で言うところの人間などの知的生命体の乗組員は存在しておりませんので私が本艦の代表者となっております。」
(AIが管理しているのか...)
「それにお見受けしたところ、あなたのその有機運動体は既に補給の限界を超えつつあるようですが、艦内へおいで下されば補給と補修が可能です。」
随分と持って回った言い方をするものだと思ったが、要するに食べ物で釣ろうという魂胆か。
10歳の小娘を誘うには定石中の定石だと感心しつつも背に腹は替えられない。
実はものすごく空腹なのだ。鳥さんは私が丸2日眠っていたと言ってたから、もう3日位はまともに食べていないのだ。
それに、これだけの文明レベルの連中なら、私を捕まえたり殺す気ならとっくにやってるはずだ。
私はその誘いに一も二もなく賛同した。
「私もお聞きしたいことがありますのでお邪魔させていただきますわ!」
「それでは乗艦するためののりものを向かわせます。」
すぐに四角い箱のようなものが音もなくやって来た。
明るい灰色で全く継ぎ目のない箱で窓はない。中央部に両開きの扉があってそれが開いた。
「どうぞお乗りください。お乗りになれば自動的に中央指揮所までご案内いたします。」
頭の中に声が響いたのでそれに従って乗り込む。
よく見ると箱は僅かに空中に浮かんでいる。車内からは何と窓があり外が見える。
室内は、扉の両脇に2人位が座れるベンチがあり、両サイドで合計8人が座れる。立つ人も含めると最大20人位は乗れそうだ。
前世の記憶にある飛鳥山の斜行エレベーターに何となく似ているなーと思った。
扉が閉まり、箱が動きはじめた。動き出してすぐに気付いたが車輪がないようだ。路面を走る振動が全くないのだ。もちろん音もしない。
箱はやがてトンネルの入口みたいなところから真っ暗な空間に入り、しばらく走ったところで停止して扉が開いた。
「ようこそおいで下さいました! 歓迎いたします。どうぞ適当におかけ下さい」
頭の中に声が響く。
私は箱形ののりものから降りて周囲を見渡す。
中央指揮所(メインブリッジ)と言うからもっと立派な部屋を想像していたけど、天井はけっこう高いものの、意外と小さな部屋だった。
しかも歯医者の治療台みたいな椅子が何台かあるだけで、他には本当に何もない、ガラーンとした部屋だった。
「私が聞きたいことは、何で宇宙船がこんな所にあるのか?ということと...」
「これをここからどこかへ移動させることはできるのか?ということ、です。ここに住む鳥さんたちが怖いからどけてほしいって言ってるんで...」
私は単刀直入に切り出した。世間話の話題は思いつかなかったから。
「まず最初のご質問についてですが...」
「本艦は跳躍航行中の事故で予期せぬ次元転移を引き起こしてしまったのです。ワープアウトしたらここに着地していました。」
声のトーンが心なしか沈んだ。
「その際、有機生命体の乗組員は全員消失しました。おそらくは次元転移に耐えきれず消滅したか元の次元に残されたかと推定しています。また、異なる次元に転移した結果、本国との通信は完全に途絶しました。」
「私たちは次元間航行の技術を持たないため原隊復帰も叶わず、本艦は完全に孤立した状況にあります。この惑星の時間単位で392年と278日前のことです。」
管制システムはさらに続けて言う。
「二つ目のご質問についてですが。それはあなたがそれをお命じになって下されば、今すぐにでもここから飛び立つことが可能です。」
「えっ? ワタシガメイジル? イマスグニデモ?」
私は一瞬、意味が分からず、そのままの言葉を反芻した。
「はい。そしてそれは、私、というか本艦全体の希望でもあります。私は本艦を作戦遂行可能状態に維持することについての権限を持ち、この惑星に到達した時に生じた不具合の復旧作業を行ってまいりました。しかし、完全な機能回復は主動力を起動する必要があって、それにはこの惑星の軌道上などに移動しなければならないのです。大気圏内では環境に重大な影響を与えるためです。」
一呼吸置いて...
「しかし、私は作戦そのものの指揮命令権は持ちません。従って本艦を発進、移動させることはできないのです。そして本艦は先ほどもご説明しました通り、今は本国の指揮下からも外れており、現在、本艦に命令できるのはあなただけなのです。」
私は考え込んだ。
私が命じればここから動かせるということだが、本当にそうして良いのかは判断がつかない。
再び地上に降りられるかも判らないし、この辺のことを確認しないと。
「あのー 参考までに聞きたいんですけど、この船って何ができるんですか?」
「本艦は複数の恒星から成る一定の星域での治安維持と安全保障を主任務とする基地機能を持つ軍艦です。航宙能力を持つ艦船の港湾設備、修理・建造施設、兵器、装備の製造施設、紛争や災害で発生した避難民の保護・・・・・・」
説明は延々と続いたが、要するに宇宙空間で自己完結型の活動ができるひとつの『国』みたいなものらしい。しかも、前世の私にすら理解できないような高い科学技術力を持った...
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