3.ワープゲートとマジックボックス

孔明と父上様の会談が終わり、私は意識をタケミナカタにいる本物の私の方へと戻した。


今はユキも地上に降りているので、私の世話をしてくれるアンドロイドはいない。


それで、代役として、簡易型汎用ヒト型デバイスの支援タイプが私の身の回りのサポートに付いてくれている。


いささか外観は厳ついが、それに似合わず、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるのでけっこう気に入っている。


何より、全く気を遣わないのが良い。なまじ人間っぽいと、どうも気兼ねしてしまうような気がする。今度、汎用ネコ型デバイスとかも提案してみよう。



父上様から孔明たちに下賜された家は、あの事件に連座して取りつぶされた元子爵家の屋敷だった。


最初はエンセルの屋敷を、と言われたが、大きすぎるので低調にお断りした。住人はせいぜい10人にも満たないのだ。


それで小ぶりなこの屋敷になったのだが、それでも15室ぐらいある。まあ、空き部屋は物置にでもすれば良いか。


店の方は、中心街の大通りから一本入ったところにある2階建ての店舗だ。立地の割に周囲は静かである。


規模は中の下ぐらいで、1階が店舗と商談室、倉庫など。上階は店主や使用人の部屋になっている。


この店も先日の事件で接収された、取りつぶしになった貴族の愛人の店だったという。


店では、薬と、あまり他では見られないような希少性のある雑貨類を扱う予定である。


店舗の内装や家具などを艦内で製作するため、みんなが一旦母艦へ戻ってきた。


で、ここで問題になったのが、ここで製作した物を、王都の店や屋敷にどうやって搬入するか?ということ。


これは今後の商品搬入にも関わることなのだが、地上までは揚陸艇で差し支えないと思うが、問題はその先。まさか、馬車業者を雇うわけにも行かないし、輸送トラックも論外だ。


いっそ、馬型アンドロイドを作って、自前の馬車を用意するか?という案も浮上したが、そもそも、揚陸艇が介在する限り、夜しか活動できないことに根本的な問題がある・・・というところに行き詰まってしまった。


あと、揚陸艇絡みでは、夜間しか使えない問題と、往復に要する時間も無視できない、という話になった。


かなり、膠着状態になった時、私が、


「跳躍航行技術があるのに、何で、ワーブゲートとかマジックバックとかはないの?」


・・・とポツリと言ったら、孔明が絶句した。


そうなのだ、いかに高度な科学技術力が生み出したAIと言っても、創意工夫とか閃きは、地球程度の文明レベルの人間にすら敵わないのてあった。


孔明が、


「地球という星が星間連合の敵にならなかったことは幸運だった...」


とブツブツ呟いていた。


ちなみに、孔明には私の前世の記憶のことは既に話してある。


全く驚かれもしなかった。星間連合に属するある種族が地球人と共通の祖先を持っていたのだろう・・・と言っていた。


それで、先に、ワープゲートとマジックバッグを開発することになったのであるが、検討を進めるうちに、両者はほとんど同じものであることが判ったので、一本化して進めることになった。


ワープゲートはすぐにできた。跳躍する距離がごく短いため構造自体を大幅に簡易化できたためである。


使い方は簡単! 扉を開けば移動先の空間があるので歩いてそこを通るだけ。この扉がワープゲートのユニットである。


とりあえず完成したワープゲートを、も少し詳しく説明すると..


扉はどこにでも設置できるが、壁に設置した方が不自然さの解消にもつながるので推奨されている。裏からは使えない。


扉の大きさによって移動可能な物体の大きさは制限を受ける。扉に入らない、あるいは、出せない大きさの物は移動させることができない。


移動先にもユニットを設置して、互いに移動設定をすればセットアップか完了する。扉のサイズは互いに異なっていても良い。


複数の地点にそれぞれユニットを配置すれば、移動先を選択することも可能である。扉を開く前に行き先を念じるだけで良い。


マジックバックは、バックだと小さい物しか収納できないので、ボックス型のが試作された。これはまだまだ要研究である。


結局、馬と馬車を艦内工場で製作して、揚陸艇の大きいヤツで地上に降ろして、何とか屋敷まで持ち込んだ。


この馬車には、通常の乗降口とは反対側にもやや大きめの非常出口のような扉を浸け、その外側と内側をにワープゲートにしてある。外側は物資の搬出入用、内側は人員の移動用である。


また、後ろにはトランクルームに模したマジックボックスを取り付けてある。


これらの移動先は今のところタケミナカタの艦内になっているが、今後、ゲートを増やせば、様々な場所へ移動可能になる。


馬は2頭。多分、今後、必要になると思われるので、アンドロイドである。人と意思疎通が可能だ。もちろん、戦闘も可能。人も建物も瞬時に粉砕する、とんでもない怪物と化すのだ。


簡易型汎用ヒト型デハイスの支援タイプを4体、馬車に乗せて同行させている。屋敷と店舗の工事用である。


また、現在、移動先となつている母艦の倉庫スペースにも支援タイプのロボットを配置してあり、収納物の搬入、搬出、整理を行わせるようになっている。


こうして、まず、馬車のワープゲートから必要資材を取り出して、屋敷内と店舗内にワープゲートを設置した。


そして、それぞれのワープゲートを使って資材を搬入して内装工事をや設備工事を行い、その後、家具や什器類を搬入してんな制させた。


なお、ドサクサ紛れに、王宮の私の私室にも、クローゼットの奥に、こっそりワープゲートを取り付けた。これで、艦内や孔明の屋敷、店との移動が簡単になるし、量産型ワタシとのすり替わりも楽になる。

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