3.新兵器の開発
ジジが王都に潜入してから、私-シャルナは特に取り立ててすることもなく、猛烈にヒマだった。
それで、ずーっと研究開発区画に入り浸っている。
そこにもスタッフ用の居住スペースがあり、食事も仮眠も取れるのでついつい長居してしまう。私以外に人間はいないので煙たがられることもない。
それで今、私がここで作ろうとしているのは自分用の剣だ。
私も一応王族なので、子どもながら剣術の指南は受けている。先生からはお世辞もあるだろうが筋が良いと言われている。
兵士には到底敵うべくもないが、チンピラや盗賊相手なら、一対一であるかぎり、多分勝てる。
でも如何せん、子ども、しかも女なのだ。筋力が全くない。大人が使う剣は重すぎてどうにもならないのである。とはいえ短剣では抑止力にもならないし...
このことは今回、王都からの脱出行でイヤというほど味あわされた。
しかし、剣というのは自重で叩き斬るものなので、軽くしたり短くすると威力が格段に落ちる。そこで考えたのが、材質をチタンかセラミックにして、超音波振動させるというもの。いわゆる超音波ナイフの刃の長いヤツである。
まあ、星間連合の兵器はレーザー兵器と実弾兵器中心みたいだから、この場合、レーザーソードとかがお薦めなんだろうけど、この世界でそれを使うと私が魔女か悪魔に見られそうで使いづらいのだ。
製作はあっという間だった。ここの製造装置は3Dプリンタのようなものだが分子合成で造形し、異なる材質、構造のものを一体として作る。
振動のオンオフは鞘の収納で切り替えるようにした。
バッテリーというかパワーユニットは標準規格品を使った。エネルギー消費がビーム兵器とかに比べて圧倒的に少ないから百年ぐらいもつみたいだ。
材質は両方作ってみたが、見た目的にチタン製のを使うことにした。一見、そんなに鋭利な印象はないが怖いぐらいよく切れる。打ち合えば確実に相手の剣を切断してしまうだろう。
ユキが、私が試し斬りをしているのを見て、その切れ味に眼を見張っていた。
ユキは戦闘アンドロイドなので、色々な武器を驚異的な能力で使いこなすが、彼女でも普通の剣ではこんな斬り方はできないそうだ。それが10歳の子どもの私がやったので相当に驚いたのであった。
(まあ、私がすごいんじゃないんだけどね...)
あと、遺伝子シンセサイザなる装置も少し触ってみた。
ここでは遺伝子組み換えとか生やさしいものではなく、遺伝子をゼロから合成する技術があるのである。
このところ毎食、何らかの肉を食べているが、それらは他のタンパク質で作った合成肉ではないし、艦内に養鶏場や牧場があるわけでもない。それらは最初から「肉」として育てられた一種の作物なのである。
しかも、チキンなら最初からムネ肉とモモ肉が別々に作られる。卵も最初から殻のない状態のものが作られる。そこにはニワトリという生物は、もはや家畜としては存在していないのだ。
そして、アンドロイドやバイオロイドも同じ技術の延長線上にあるそうだ。
生物兵器も作り邦題だが、創薬もやり邦題だ。私はそっちの方に注目したい。この世界は感染症に対しては非常に脆弱だから、この船がこの次元空間に迷い込んだのは神の采配だったのかも知れないと思う。
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