概要
記憶喪失のアンナは、美しき地下牢の青年・眠りの君と出会った。一目で恋に落ちた彼女は、他者を寄せつけようとしない青年になんとか振り向いてもらおうと決意する。
青年は、誰かからの命令なしには地下牢を出ることができない身だった。
アンナは、とある事情から、夜になれば狩人から命を狙われる日々を送っている。
そんな二人は、日が昇るたびに地下牢で逢瀬を重ね、ささやかで穏やかな時間を送る――はずだった。
凍月の夜、青年がアンナへ刃を向けるまでは。
罪を自覚した人間は不思議な力を手に入れ、魔女となる。
革命を終えた国の片隅には、花々の咲き乱れる裏庭がある。
そして革命家だった少女には魔女殺しの瞳が、暗殺者だった青年には魔女の力が宿った。
逃れられない過
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!魔女の庭に咲くのは恋する女の喜びか、あるいは死を願う憎しみか。それとも
記憶喪失の少女が、夜になると館に現れる者から命を狙われる…そんな衝撃のエピソードからこの物語ははじまります。
なぜ少女を狙うのか。
なぜ少女は記憶がないのか。
そして、地下牢に捕らわれた美しき青年は誰なのか――。
散りばめられた謎を読み解くひまもなく今度は4人の魔女が館に訪れ、そしてここから、彼らを取り巻く四季のストーリーが展開されてゆく。
緻密に練られた世界観と魅力的なキャラクター。そしてそのキャラクターたちひとりひとりに課せられた重い鎖と過去の因果が、巡る季節に色を変えていく美しい屋敷のバックガーデンと共に紐解かれていきます。
ひとつの季節が終わるたびに、ひとりの魔女の話に焦点を当…続きを読む - ★★★ Excellent!!!移りゆく季節。美しく激しく、あまりに切なく、けれどとてもやさしい物語。
記憶喪失の少女アンナと、地下牢で眠る美しき青年ルー。
その初恋は、寒さ厳しい冬の地下牢からはじまった。
物語を象徴する四季の移り変わり。
五感に訴えてくる色彩と温度。
魔女とは、罪とは。
過去から、己の心から。
逃げて、目をそらして、否定して、怒り、憎み、それでも人は——
とても美しく、激しく、あまりにも切なく、けれどとてもやさしい物語です。
アンナとルーと、彼らをとりまく人々。敵も味方も、きっとみんながそれぞれに目一杯生きたからこそたどりついた結末で。読後の余韻がたまりません。
このエンディングを見られてよかった。心からそう思います。 - ★★★ Excellent!!!五感と理性に訴えかけてくる美しい(だけじゃない)物語
最後まで読み切りましたので、改めてレビューをさせていただきます。
*以前のレビューは末尾に残しています。
一言でいうと、「素晴らしい!」です。
30万文字超と文字数だけ見ると長編としては割と長いんですが、全く気になりませんでした。文章がまず巧みで全く疲れないんですよね。これは小説猛者の仕事です。
表現の美しさ、言葉の豊富さ・巧みさも読んでて飽きない。
こと、「花」の描写が見事です。色、形、匂い、場合によっては肌触り。まさに五感に訴えてきます。見事だと思いました。
以前のレビュー(↓)にもある通り、とにかく人物の解像度が高い。とにかく高い。どういう人生を歩み、どういう思考を身に着け、どうい…続きを読む - ★★★ Excellent!!!四季と色彩が美しい物語
記憶喪失のキーパーソン、アンナ・ビルツと、彼女を狙う暗殺者を軸にした魔女の物語です。
五感で感じる小説、という触れ込みのものもありますが、今作は特に視覚と触覚(というか季節の移り変わりによる温度差)を感じやすい描かれ方をしているなあ、と感じました。序章は冬の季節で、寒々とした光景と二人の関係性がリンクしているのもより魅力的かつ効果的に思えます。この二人の、気安くなりそうで突き放されるような絶妙な距離感に、私自身何も信じられなくなるような、人間関係のハラハラした部分を読んでいる気がして、これからどうなるのかと気になって仕方がありません。
そして、第二章からの一気に華やぐ感じが、序章とあらゆ…続きを読む