記憶喪失の少女が、夜になると館に現れる者から命を狙われる…そんな衝撃のエピソードからこの物語ははじまります。
なぜ少女を狙うのか。
なぜ少女は記憶がないのか。
そして、地下牢に捕らわれた美しき青年は誰なのか――。
散りばめられた謎を読み解くひまもなく今度は4人の魔女が館に訪れ、そしてここから、彼らを取り巻く四季のストーリーが展開されてゆく。
緻密に練られた世界観と魅力的なキャラクター。そしてそのキャラクターたちひとりひとりに課せられた重い鎖と過去の因果が、巡る季節に色を変えていく美しい屋敷のバックガーデンと共に紐解かれていきます。
ひとつの季節が終わるたびに、ひとりの魔女の話に焦点を当てて描かれており、キャラクターの関係性が徐々に変わっていくところも見所のひとつではないでしょうか。
四季折々の花が咲く美しいバックガーデン。
けれどその庭は決して美しいだけの場所ではなくて…。
ぜひ、その結末はあなたの目で確かめてください。
記憶喪失の少女アンナと、地下牢で眠る美しき青年ルー。
その初恋は、寒さ厳しい冬の地下牢からはじまった。
物語を象徴する四季の移り変わり。
五感に訴えてくる色彩と温度。
魔女とは、罪とは。
過去から、己の心から。
逃げて、目をそらして、否定して、怒り、憎み、それでも人は——
とても美しく、激しく、あまりにも切なく、けれどとてもやさしい物語です。
アンナとルーと、彼らをとりまく人々。敵も味方も、きっとみんながそれぞれに目一杯生きたからこそたどりついた結末で。読後の余韻がたまりません。
このエンディングを見られてよかった。心からそう思います。
最後まで読み切りましたので、改めてレビューをさせていただきます。
*以前のレビューは末尾に残しています。
一言でいうと、「素晴らしい!」です。
30万文字超と文字数だけ見ると長編としては割と長いんですが、全く気になりませんでした。文章がまず巧みで全く疲れないんですよね。これは小説猛者の仕事です。
表現の美しさ、言葉の豊富さ・巧みさも読んでて飽きない。
こと、「花」の描写が見事です。色、形、匂い、場合によっては肌触り。まさに五感に訴えてきます。見事だと思いました。
以前のレビュー(↓)にもある通り、とにかく人物の解像度が高い。とにかく高い。どういう人生を歩み、どういう思考を身に着け、どういう判断をするか――そういうことに対する説得力が凄まじいのです。彼ら、彼女らの「判断」を見ても「ですよね」と読者としては深く納得せざるを得ない。一本芯の通ったキャラクターが完成しているからこそなんですよね、これが。
どの登場人物も(もちろん敵役も)、皆「信念」を持っていて、だからこそ読んでる側としては感情がぐちゃぐちゃにさせられます。あまり書くとネタバレになるのでアレですが、とにかく人物がいい。どのキャラクターもいい。特定のキャラクターにヘイトを集めず、それぞれの「良さ」で読者(というか私)を惹きつける描写というのはすごい能力の結実だと思います。どのキャラが一番好きかと言われると割と迷いますが、ティカちゃんです(←迷ってない) いや、でも、他のキャラクターもイイんです。ほかの魔女たち――レイモンドもディエンもフラウも実に良い。
高い解像度は、人物ばかりではないのです。世界そのものもフルハイビジョンで描かれています。3年前の革命から始まる一連の流れ。アンナ・ビルツとルー・アージェント、裏庭、魔女たち……その関係性。練りに練られた世界観が、これでもか、これでもか、と、それでいて過不足なしに描かれています。その中で人物たちは成長し、あるいは変化し……というところも、実に見事に描かれています。驚きでした。
とにかく最後の最後まで全く気が抜けない物語です。
語ろうと思えば三日くらい語れる(その半分はティカちゃんについてのトーク)くらい、熱量のある作品です。
自信を持って 強 く オ ス ス メ したい逸品でございます。
(以下、以前のレビュー)―――――
第二章読み終わったところで我慢できなくなったのでレビューを投下します。
続きも非常に気になっていて、じゃぁ読めよって感じではあるのですが、この物語は "いち早く" もっと知られるべきと思い、レビューを投下させていただく次第。
※ネタバレ回避(フィルタつけたくない)のため若干歯切れの悪いレビューになりますがご了承ください。
まず人物。
主人公のアンナを始め、登場人物が多数出てくるのですが、どれもこれもキャラが立っててすごい。ティカとフラウなんて最高でしょ(※個人の感想です)
もちろん主人公のキャラの濃さといったらまぁすごいんです。
勘違いや妄想特急のスピードも凄いんだけど、キャラクターとしての温度差もすごい。
ふわふわ・ぽわぽわ系のキャラと侮っていると……。
「推し」が必ず見つかります。
物語・舞台設定。
「本当によく練り込まれてるなぁ」と感じたのはレビュー書いてる今の段階で、読んでる最中はそんな事自体意識させない。
設定面もこれがアツい。魔女もそうだけど、社会情勢とかも。随所に挟まれる過去とか、それに対する現在とか。
とにかくマイナス的に見られる要素が見当たらない。
思わず絶賛したくなること請け合いです。
あと、一見すると女性向け(ジャンル「恋愛」だし)なのですが、男性の私でもとても楽しめております。ご安心ください。
非常におもしろいです。とにかくおすすめしたい。
私も続きを読まなければ。
記憶喪失のキーパーソン、アンナ・ビルツと、彼女を狙う暗殺者を軸にした魔女の物語です。
五感で感じる小説、という触れ込みのものもありますが、今作は特に視覚と触覚(というか季節の移り変わりによる温度差)を感じやすい描かれ方をしているなあ、と感じました。序章は冬の季節で、寒々とした光景と二人の関係性がリンクしているのもより魅力的かつ効果的に思えます。この二人の、気安くなりそうで突き放されるような絶妙な距離感に、私自身何も信じられなくなるような、人間関係のハラハラした部分を読んでいる気がして、これからどうなるのかと気になって仕方がありません。
そして、第二章からの一気に華やぐ感じが、序章とあらゆる部分で対比を感じますし、明るく賑やかなはずなのに常々まとわりつく感覚もまた、物語として先を読ませたくなる構成、展開なのだなと感じています。季節が移ろうなかで、それぞれがどのように変わるのか、あるいは変わらないのか、ハラハラとワクワクとドキドキを抱えながら読み進めたいと思います。